∞nightnight〜杯座∞


――寒い。

部屋に漂う空気の冷たさに目を覚ました。
辺りはまだ暗い。
タオルケットにくるまって、体を丸めたまま再び目を閉じると、風がスーッと耳から頬を撫でていった。
寒さで意識だけが急速に覚醒していく。

――ああ、そうか。

昼間の熱気が籠もった部屋では寝苦しくて、窓を開けていたんだった。
空気を入れ換えるだけのつもりだったけれど、吹き込む涼やかな風が心地良くて、そのまま眠ってしまったらしい。

涼しく感じた風も、夜が更けるにつれて冷たくなり、随分、体が冷えていた。
のそのそと体を起こし、タオルケットを羽織って窓を閉める。
カーテンを引くと、部屋の中は真っ暗になった。
それでも、部屋の何処に何が有るかは手に取るように分かる。
ベッドに戻り、使い手の無いもう一枚のタオルケットを広げて自分の物と二枚重ね、体を潜り込ませた。

「…カノン…」

僅かに残る、彼の匂い。
けれど、体を横にして手を伸ばしても、触れるのは冷たいシーツの感触だけ。
隣にカノンが居れば、温かいのに。
そう思うと、急に淋しくなって涙が滲んだ。

いつになったら帰って来るのだろう。
離れ離れの生活には慣れたつもりでいたけれど、何の連絡もないまま、ただ時間ばかりが過ぎていくのは流石に辛い。
ただ、カノンがどんな思いで海界の復興に従事しているか知らない訳ではないから。
必ず、帰ってくる。
そう信じて、今は待つしかない。

「カノン…」

一人で寝るには大き過ぎるベッドの片端で、彼のタオルケットにくるまって。
暫くじっとしていると、徐々に体が温まって、彼の体温に抱かれている様な安心感に包まれる。

「おやすみ」

カノンがいつ帰って来ても良いように、ベッドの半分を空けたまま、今夜も静かに目を閉じた。




拍手ありがとうございます。おまけ小話は海龍と杯座で「おやすみ」






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