小説
□悋気と言う名の愛
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余りにも心配するセリスとエドガーの表情に、ティナは譲歩した。
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セリスと兼用するティナの部屋。そこに着くなり、直ぐ様ベッドに寝かされ掌を額に当てて体温を確認された。
「熱は無い様だ」
「そうね…。頭は痛くないもの」
「頭は、痛くないのなら何処が痛いのだね?」
「……」
その質問に寄る答えは沈黙しか返って来なかった。
「最近の君は何処か可笑しいと思うのだが…何かあったのかい?」
ティナからは更に重い沈黙が返って来るだけ。
「…ティナ、話してはくれないだろうか?君の内に秘めた痛みを」
「…エドガー、私は何処も痛くないわ」
隔意な遣り取りが続く。
「私に嘘は付いて欲しくない」
「……」
蒼い瞳がティナを映す。思わず視線を逸らしてしまう。その動作は少なからず彼に無言の拒絶を伝える事となるのだろう。
ごめんなさい…。
心の奥底で言葉に成らない謝罪をする。
聞こえない筈の声に応えるかの様にエドガーは子供をあやす様にそっとティナに触れた。
「君の辛そうな顔を見ると、私まで辛くなる。…君の事が心配で心配で堪らないのだよ」
「エドガー……」
エドガーは床に膝を伏せて俯いているティナの目線が合う角度から、真っ直ぐ見詰めた。
私から逃げないでと訴えかける様に、でも責める訳でも無く。
見つめ合いながらどれぐらい時間が流れただろう。
長い様で短い時の動き。
一秒一秒がとても長く感じられた。
漸く彼の誠意に意を決意して、私は重い口を開いた。
「あのね、私の…身体」
「身体?」
「私の身体、…変なの。胸が、ここが変なの」
心臓を押さえながら彼を見遣った。
「どうしてそう思うのかな?」
ティナからは今までの事柄が語られた。
貴方がセリスの側に居るのを見ると胸が痛くなるのだと、女性と居るのを見ると胸が苦しくなるのだと、身体の変化を事細かに全て打ち明けた。
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