小説
□逢瀬
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「エドガーって温かい。…気持ちいい」
「…ティナ」
この時が永遠に続けばいいのにと何度願ったことか。この愛しさは淡く儚い。
エナメルみたいにキラリと艶めく桜唇を指でなぞり魅惑な感触に目眩を起こしそうになる。欲した真っ赤に実った芳甘の桃の味は忘れられない。私だけにしか味わう事が出来ない実りの果実を唇に寄せる。
「……ダメ…」
「どうして?」
「…だって」
貴方との口付けはとても甘過ぎて溶けそうな程癖になってしまうから。もっと欲しいとキリがなくなる。麻薬みたいに抜け出せなくなってしまう。今だってそう。欲しくて欲しくて触れたくて触れて欲しくて。その大きな掌が私の肌に合わさる度に体が火照る。燃えそうな程に…熱い。
貴方の唇から赤い炎が私の体の中を宿す。
駄目…抜け出せなくなってしまう。そうなれば、困るでしょ?
私達2人の世界はいつまでも続かないのだから…。
「…私達……」
「……」
「もう…終わりにしましょう」
「……ティナ」
「こんな事続けていたら離れられなくなる」
「……」
「いずれは離れなくてはならないのだから…」
「……」
いっそ2人で在るべき場所から逃げ出して行き着く先で2人だけで暮らそう。そう言えたらどんなに楽か。
「ティナ、そんな事言わないでおくれ。会いに行くから。この戦いが終わったら…」
『迎えに行くから』そんな安易な約束を口にするのはとてもじゃないが私には出来なかった。
果たされるかわからないような約束を君と交わしたくなかった。
君の居心地がいい幸福から連れ去る事になってしまいそうで怖いんだ。
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