小説

□逢瀬
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【逢瀬】


前を向いても後ろを向いても左右を見回しても君の姿は無い。何処にも見当たらない。

当然だ、彼女は今このパーティにはいなくて大空高くにある飛空挺で待機している。

そんなの分かり切っている事。なのに、何故いる筈もないこの場所で彼女を目で探すのだ?

この場所から見える筈もない彼女の姿を求めて何故空を見上げているのだ…?

そこまで私は彼女を愛しているのだろうか…?


止めなければならない想いだというのに、そう思えば思う程溢れ出すこの甘美な気持ち。

遠退けば君が欲しいとどうしようもない方角に志向は反転させられる。


君とこのままで居たい。


この気持ちのままで時を重ねたい。






「エドガー?」


会心の友から呼ばれて間を空けながら返事を返した。

「…ああ、すまない」

別の場所に彷徨いていた心を戻した。今は仲間全員を部屋に呼び、明日の戦略を立てていた所だった。

いよいよ、この戦も終幕を迎えようとしていた。緊迫な空気がそれを物語る。

「いいって。疲れてるんだろ?話は分かったからさ、今日はゆっくり休めよ。お疲れ」

ポンとロックに肩を叩かれたのが合図かの様に皆は熱意の隠った顔付きで各自の部屋に戻っていく。


ロックが部屋を出るのに続きセリス、マッシュ、カイエンと次々に人が出ていった。

新メンバーのゴゴが出た後ティナ1人を部屋に残して内側から手早く鍵を掛けた。


ガチャと音が鳴ったその瞬間、2人の体は隙間無く重なった。腕に込めた力はどうしようもない愛しさ。


「…ティナ」

ずっとずっと、顔を見た時からこうしたかった。壊れそうなぐらい強く抱き締めて君の体温を直接この腕に抱き寄せたかった。



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