小説
□嫉妬心
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【嫉妬心】
フィガロ城の図書室。城の図書室だけあって本の数や種類は充実している。
この場所で国王であるエドガーは調べものをしていた。
そこに同じ顔をした筋肉質な男が近付いてきた。
「兄貴!」
彼はエドガーの弟のマッシュだ。山に篭り日々修行に専念している。時折、我が家ともいえるフィガロ城に帰ってくる。
「マッシュ、帰ってきたのか?」
エドガーはパラパラと本を読んでいた腕を止める。
「ああ、兄貴は調べもの?相変わらず忙しそうだな」
「まあな」
久しぶりの兄弟である2人の他愛もない会話。長々と話してしまう。
「程々にな」
一言兄であるエドガーに忠告をして手をひらひら揺らせてマッシュは出ていった。
本の文字から図書室の中央部分にある時計に目をずらす。
もうすぐティナが来るな。
約束の時間までもう少しだ。
早く終わらせよう。
先程より少し作業を速める。
久しぶりに会えるティナにエドガーは胸漕がれて自然と顔がニヤける。
「こんな顔、誰にも見せられんな。1人で良かった」
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パタンと本が閉じられた。これで今日の仕事はおしまい。
書類の束を持って一端部屋に戻りそれを片付ける。そして全身を写す鏡の前で身だしなみを整える。
「よし」
鏡の自分に満足した様子のエドガーはそのままティナが待っているであろう客室へ歩む。
扉の前まで来た足は聞き慣れた声に因って停止する。
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