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□陰と陽
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時は丑三つ時。
珍しく日が暮れる前に街に着けたセヴィ一行は、各々が疲れた体を癒し、完全に眠りに付いた頃だった。

夜鳴き鳥も鳴き止み、耳が痛くなるような静寂が訪れた時、源一郎は目を覚ました。感じる違和感に体を起こし、風を入れる為に開いている窓から外を見る。



「(血の臭い…、それにこの妙な空気はなんだ…?)」



原因を確かめるべく、源一郎は鞄から護身用にと刀を抜き出した時、部屋の中の違和感に気がついた。








シェンがいないのだ。







しかし源一郎はそれに対して「またか?」と一息ついた。
1人で考え事をする為に、シェンが皆が寝静まった後に出掛けるのはよくある事だった。今夜もきっとそうなのだろうと特に気にせず、窓から飛び降りた。

「シェンもこの気配を感じているのであればそこで会えよう」

源一郎はそのままその場から駆け出した。



























血の臭いを追って源一郎がやって来たのは、街から少し離れた森の中。近くに川があるのだろうか、微かに水の匂いもしてきた。その匂いに紛らわされること無く、源一郎は真っ直ぐ更に奥へと足を進める。
ふと、目の前に少し明るくなった場所が見えた。開けた所になっているらしく、月の光が差し込んでいる。

臭いの場所と気配の場所が一致した。
腰に携えた刀に手を置きながら、茂みから覗き込むと、源一郎ははっと息を飲んだ。




「(シェン…か?しかし、この気配と有り様は……)」





そこにいたのは、宿屋からいなくなっていたシェンだった。しかし普段と違う雰囲気に、源一郎は疑問を抱いた。
シェンと思われる人物は、血溜まりの中に立っていた。足下には数分前までには生きていたであろう男の屍が転がっていた。
ふと、屍を眺めていた顔が上がり、源一郎へと振り向いた。













「覗き見か?隠れてないで出て来い」












声は確かにシェンだ。しかし言葉の中にある冷たさに源一郎は気を引き締め、茂みから姿を月光の下へと出した。
その姿を見たシェンは表情を変えずに、酷く冷たい目で源一郎を捕らえた。









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