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□星降る砂漠の追想
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人は、魔に誑かされて神を喰らう。
魔は、神に討ち堕とされて人を誑かす。
神は、人に喰われて魔を討ち堕とす。
では、我らは何をしよう。
…我らは行く末を見守ろう。
人と、神と、魔を…その行く末を見守り綴ろう。
それが、我らの役目と信じて。

「てなわけで、旅をしてきなさい。梓」
「いきなりですね、母上」
「そうね。でも、貴女は行かなきゃいけない」
「はぁ……」
「世界はとても広いの。そこで見てきなさい」
「何をですか」
「人と、神と、魔の行く末…星の集う場所を、よ」



星降る砂漠の追想



「ふぅ………」

気温で温くなった水を飲み干して、目の前の湖の中に水筒を入れる。
旅を始めて約半年。すっかり辺りは砂漠だらけだ。
ただ、その分知った事はある。あそこがどんなに閉鎖的な環境だったのか、と。
まぁ、そこまで酷くは無かっただろうが…そう思わずにはいられなかった。

「さて、行きますか」

傍に置いておいた長刀を腰のベルトに差し、立ち上がる。

「今日までに町に着くといいんだけど…」

何処を見ても砂だらけな景色に若干飽きながら、辺りを見渡す。その時だった。

「離してよー! ってか、離さんかい!!」
「いっでぇぇぇぇ!!」
「………」

目の前に白銀の髪の少女が駆けてきた。少女と言っても、同い年くらいだろう。
そんな彼女は私の姿を見つけると、素早い動きで私の背後に回る。

「お願い! ウチ、攫われそうになってんの!!」
「………はぁ、それで?」
「だ・か・ら! 助けてーな!!」

前を向くと、武器を持った男たちが数人。私たちを取り囲むように立っていた。
溜め息をこぼして刀を持つ。ただ、鞘から抜かずに、だ。

「そこから動かないでくださいね」

そう言うと、足に力を入れる。
一瞬にして、間合いを縮めて腕を振り上げる。振り下ろす。振り回す。
そんな単純な動作で、あっという間に立っているのは2人だけになった。

「ふ、わぁぁ……ごっつ強いなぁ」
「はぁ、それはどうも」
「しかも、息も切れてないやんかぁ」
「このくらいじゃ切れません」

長刀を差し、踵を返す。とんだ時間つぶしだ。

「ねぇねぇ、これから何処行くん?」
「近くの町ですが」
「なら、ウチ連れてったげるよ。助けてくれた恩返しや」
「はぁ…」
「よーし、決まりや! そうと決まったらレッツゴー!!」

これが、彼女との出会いだった。

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