主におお振り

□自暴自棄
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「うわ、気持ち悪い」
伝子さんの変装をしたら、一年は組の子にそう言われた。

そのときは笑ったし、伝子さんが気持ち悪いと言われたのは分かった。
けど、私も気持ち悪いのだろうか。そんなことを一瞬思った。


いや、本当はずっと前から思っていたんだ。

私は誰にも素顔を見せたことが無い。見せようとも思わない。

でも、雷蔵は私が顔を借りていても何も言わないし怒らない。

そりゃあ雷蔵の顔で悪戯したときは怒るけど、それとこれとは意味が違う。

兵助やハチだって、私を初めて見た時は驚いたけど、今はそれが当たり前のようになっている。



嫌な汗が出た


熱くないのに滝のように吹き出て、制服が嫌に肌にくっつく。





私はあいつらに同情されているのか?

可哀想なヤツだと、気持ち悪いヤツだと思われているのか?



…あいつらは親友だと思っていたのは私だけだったのか


自分が酷く滑稽に思えてきて、自分で自分を嘲笑った。

「私は…」

「三郎?」


振り向かなくても分かる、絶対に間違わない。



「雷ぞ…

ああ、

お前らも居たのか」


なんだその言いぐさはとか三郎冷たいなーと明るく話す声が私の心を突き刺す。




「…冷たいのはどっちだよ」
「…はぁ?どうした三郎」
「どうしただと…?」

そのまま怒れよ。

なんで心配なんてしてくれるんだよ。

私が更に惨めになるじゃないか。

「煩いんだよ」

ハチの眉が少し上がった。私にムカついてんだろ。長年一緒に居たら分かるよ

…長年一緒に居たのに


「黙れよ」
「どうしたんだ三郎」

「私に…私に構うなよっ!」

辺りが静寂に包まれた。私の呼吸が酷く荒いことが分かる。


「ほっといてくれよ…」








「嫌だ」
「兵助…」


「俺も」
「私も」


なんでだよ。私が気持ち悪くないのか。嫌いじゃないのか。


一人で葛藤した。


「三郎」

肩が飛び跳ねた。



「何があったの?」
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