Nitro+CHiRAL

□A promise
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睦が自分の昼食を持って、蓉司たちを探すと
こないだと同じ窓際のカウンター席に蓉司と城沼の姿があった


「睦……こっちだ」


蓉司が俺に気付き、軽く手を上げた


「3人なんだから、カウンターじゃなくてテーブルの方が良くないか?
ま、俺は別に気にしないけど……」


席は蓉司は挟むようにして3人で座った


「あ……そーだ。蓉司達に聞きたいことあんだ
俺が入院してた間の学校、色々あったんだろ?
ちょっと聞かせて欲しいんだ」


俺はハンバーガーの包み紙を剥がしながら喋っているので、蓉司の肩が跳ねたのに気がつかなかった


「たしか……三年の翁長だっけ?死んだの………ったく、学校で組争いなんかすんなって感じだよな……でも、被害が翁長と翁長の親父だけで済んで良かったよな……ちょっと、言い方悪いけど……」

睦は小さく溜め息を吐いた
蓉司は睦の言葉に目を見開いた


「……俺も蓉司も詳しく知らない……学校でもあんまり色々話されてない……」

城沼が蓉司の変わりに答える


「んだよ……やっぱり、情報でねぇよな……明日から行くし、ちょっと色々聞いてみるか……何も収穫無さそうだけど………」


ズズズズッ……と睦が残り少ないジュースを啜る音だけがやけに響いた


「睦、明日から学校来れそう……なのか?」

「ん?おう!ある程度は回復したし、これ以上勉強遅れっと次のテストに響くしな」

睦が苦笑する

「あ、そう言えば、蓉司って城沼に勉強教えて貰ってんだろ?
いいよなぁ……俺も教えて貰いてぇよ………」


「確かに城沼の教え方は分かり易いよ………けど」

蓉司が城沼を伺い見る


「………嫌だ」

「だって………」

蓉司が城沼の態度に苦笑する

「はぁ?!何だよ何だよ!見てくれてもいいじゃんか!城沼のケチ!」

睦が悪態を吐く

「忙しい………あと、面倒だ」

城沼は睦を一瞥もせずに断る


「うわーん!よーじー、城沼が俺のこといじめるー!蓉司!コイツやっぱり、性格悪ぃよ!」


睦が蓉司に泣きつく


「はははっ、ヨシヨシ。
そうだ、睦、入院中の面白い話聞かせてくれないか?」

蓉司が睦を宥めながら、問う


「面白い話?
あー、色々あるぜ!」

睦がパッと起き上がり、ニシシシと笑った





それから、暫くの間

俺達は談笑して過ごした


無表情だと思っていた城沼も面白い話には反応して、微笑む程度だか笑った

「そんでさぁ………やっと婦長が行ったと思って、菓子取り出したら……いきなり扉開いて、慌てて布団の中に菓子隠したんだよ

そしたら、『血圧測る』って言われてさ、コッチは菓子隠したまんまだから心臓バックバクなワケよ!」


「プッ………」

蓉司が笑いをかみ殺そうに手で口を覆う


「んで、無理やり測られて……数値みたら脈が尋常じゃないから、若い看護婦さんがびっくりしちゃってさ、その後医者まで様子見に来ちゃうわ……もう、大騒ぎ
オマケに結局、菓子見つかってパクられるし、ホント最悪でさー
トドメに俺の食べたかった菓子、向かい側のヤツが食べててさ……」


「……っははは!」


蓉司が堪えきれなくなって、吹き出した

城沼も口元は押さえているが微かに肩が揺れている

2人のこんな表情は見たことが無かったから少し新鮮な感じがした


「それは……睦、災難だったな……」

蓉司は笑いすぎてうっすら涙目になっていた


「ってか、病院食ってホントマジ少なくねぇ?
あんなんでよく1日保つよな!」

「睦の食欲はちょっと異常だ
城沼だってあんなに食べない…」

「あぁ……」

「ちょっ!待て!今の文脈だと、蓉司と城沼が一緒に何か食べたことあるみたいな…「三田、コイツって、食は細いけどラーメンは食べるんだぜ?」

城沼がニヤリと不敵に笑った

「あああぁ!やっぱりどっか2人で行ったのかよ!何だよ何だよ!俺が居ない間に2人の間で何が………」

その後の言葉は続かなかった
正確にはかき消された

『夕焼け小焼け』のメロディーによって

「んあ?コレって…」


「5時………」


蓉司がぼそりと呟いた


「ごめん。睦、俺達戻らなきゃならない……」


蓉司が俯きながら呟いた


「へ?あ、あぁ……もしかして2人共バイトとか?
なら、今日はお開きだな〜」


蓉司の声のトーンに少し驚いたが、特に気にせずゴミとトレイを片付けて店を出た


「はーっ!楽しかったな
また遊ぼうぜ!」


俺がにっこりと蓉司に笑い掛けると悲しそうな顔をした

城沼もどことなく悲しそうだ


「おいおい!なーに2人共辛気くせぇ顔してんだよ、別にまた明日学校会えるだろ?!」


俺が笑いながら言うと蓉司も漸く少し微笑んでくれた

「……あぁ、また会えるよな……」

「おうよ!」

ニカッと笑うと蓉司も安心したように笑った


「んじゃ、俺は帰るけど
2人共、バイト頑張れよ!
そんじゃ!また明日な!」

蓉司と城沼の両方に手を振り、踵を返し一歩踏み出した時、背中に小さな衝撃がきた


「………睦」


「へ……?蓉…司…?」


肩越しに見ると蓉司が背中から、抱き付いていた


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