Nitro+CHiRAL
□A promise
2ページ/6ページ
睦が自分の昼食を持って、蓉司たちを探すと
こないだと同じ窓際のカウンター席に蓉司と城沼の姿があった
「睦……こっちだ」
蓉司が俺に気付き、軽く手を上げた
「3人なんだから、カウンターじゃなくてテーブルの方が良くないか?
ま、俺は別に気にしないけど……」
席は蓉司は挟むようにして3人で座った
「あ……そーだ。蓉司達に聞きたいことあんだ
俺が入院してた間の学校、色々あったんだろ?
ちょっと聞かせて欲しいんだ」
俺はハンバーガーの包み紙を剥がしながら喋っているので、蓉司の肩が跳ねたのに気がつかなかった
「たしか……三年の翁長だっけ?死んだの………ったく、学校で組争いなんかすんなって感じだよな……でも、被害が翁長と翁長の親父だけで済んで良かったよな……ちょっと、言い方悪いけど……」
睦は小さく溜め息を吐いた
蓉司は睦の言葉に目を見開いた
「……俺も蓉司も詳しく知らない……学校でもあんまり色々話されてない……」
城沼が蓉司の変わりに答える
「んだよ……やっぱり、情報でねぇよな……明日から行くし、ちょっと色々聞いてみるか……何も収穫無さそうだけど………」
ズズズズッ……と睦が残り少ないジュースを啜る音だけがやけに響いた
「睦、明日から学校来れそう……なのか?」
「ん?おう!ある程度は回復したし、これ以上勉強遅れっと次のテストに響くしな」
睦が苦笑する
「あ、そう言えば、蓉司って城沼に勉強教えて貰ってんだろ?
いいよなぁ……俺も教えて貰いてぇよ………」
「確かに城沼の教え方は分かり易いよ………けど」
蓉司が城沼を伺い見る
「………嫌だ」
「だって………」
蓉司が城沼の態度に苦笑する
「はぁ?!何だよ何だよ!見てくれてもいいじゃんか!城沼のケチ!」
睦が悪態を吐く
「忙しい………あと、面倒だ」
城沼は睦を一瞥もせずに断る
「うわーん!よーじー、城沼が俺のこといじめるー!蓉司!コイツやっぱり、性格悪ぃよ!」
睦が蓉司に泣きつく
「はははっ、ヨシヨシ。
そうだ、睦、入院中の面白い話聞かせてくれないか?」
蓉司が睦を宥めながら、問う
「面白い話?
あー、色々あるぜ!」
睦がパッと起き上がり、ニシシシと笑った
それから、暫くの間
俺達は談笑して過ごした
無表情だと思っていた城沼も面白い話には反応して、微笑む程度だか笑った
「そんでさぁ………やっと婦長が行ったと思って、菓子取り出したら……いきなり扉開いて、慌てて布団の中に菓子隠したんだよ
そしたら、『血圧測る』って言われてさ、コッチは菓子隠したまんまだから心臓バックバクなワケよ!」
「プッ………」
蓉司が笑いをかみ殺そうに手で口を覆う
「んで、無理やり測られて……数値みたら脈が尋常じゃないから、若い看護婦さんがびっくりしちゃってさ、その後医者まで様子見に来ちゃうわ……もう、大騒ぎ
オマケに結局、菓子見つかってパクられるし、ホント最悪でさー
トドメに俺の食べたかった菓子、向かい側のヤツが食べててさ……」
「……っははは!」
蓉司が堪えきれなくなって、吹き出した
城沼も口元は押さえているが微かに肩が揺れている
2人のこんな表情は見たことが無かったから少し新鮮な感じがした
「それは……睦、災難だったな……」
蓉司は笑いすぎてうっすら涙目になっていた
「ってか、病院食ってホントマジ少なくねぇ?
あんなんでよく1日保つよな!」
「睦の食欲はちょっと異常だ
城沼だってあんなに食べない…」
「あぁ……」
「ちょっ!待て!今の文脈だと、蓉司と城沼が一緒に何か食べたことあるみたいな…「三田、コイツって、食は細いけどラーメンは食べるんだぜ?」
城沼がニヤリと不敵に笑った
「あああぁ!やっぱりどっか2人で行ったのかよ!何だよ何だよ!俺が居ない間に2人の間で何が………」
その後の言葉は続かなかった
正確にはかき消された
『夕焼け小焼け』のメロディーによって
「んあ?コレって…」
「5時………」
蓉司がぼそりと呟いた
「ごめん。睦、俺達戻らなきゃならない……」
蓉司が俯きながら呟いた
「へ?あ、あぁ……もしかして2人共バイトとか?
なら、今日はお開きだな〜」
蓉司の声のトーンに少し驚いたが、特に気にせずゴミとトレイを片付けて店を出た
「はーっ!楽しかったな
また遊ぼうぜ!」
俺がにっこりと蓉司に笑い掛けると悲しそうな顔をした
城沼もどことなく悲しそうだ
「おいおい!なーに2人共辛気くせぇ顔してんだよ、別にまた明日学校会えるだろ?!」
俺が笑いながら言うと蓉司も漸く少し微笑んでくれた
「……あぁ、また会えるよな……」
「おうよ!」
ニカッと笑うと蓉司も安心したように笑った
「んじゃ、俺は帰るけど
2人共、バイト頑張れよ!
そんじゃ!また明日な!」
蓉司と城沼の両方に手を振り、踵を返し一歩踏み出した時、背中に小さな衝撃がきた
「………睦」
「へ……?蓉…司…?」
肩越しに見ると蓉司が背中から、抱き付いていた
.