Nitro+CHiRAL

□..eternal labyrinth.. destining
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もう、あれから幾つの月が巡ったか分からない

あの日以来、自分の成長も止まってしまった

長く伸びた髪は三つ編みにして緩く首に巻かれている


自分が愛した猫は隣で暖かい温度を保ったまま冷たく横たわっている


あの日


あの日はまだこの愛しい猫が動いていた日

一緒に森を駆けていた

自分は目の前の敵に夢中で

後ろから迫るモノに気付かなかった


『コノエッ!』

名前を叫ばれた瞬間
横に突き飛ばされた


目に焼き付いたのは白が赤く染まる瞬間


『!………ライ…ッ!』


急いで駆け寄った躯には痛々しい爪痕が残っていた


その後、記憶に霞がかかる

気付けば、この場所に来ていた
愛しい猫の痛々しい爪痕は、昔闘った猫から引き継いだ“記憶”を使った

爪痕は塞がったが、流れ出した“生命”は戻らない

何度も
何度も何度も
何度も何度も何度も

声が枯れても名前を呼んだ

腕が痛くなっても躯を揺すった


それでも伏せられた目蓋が開くことは無かった




自分は泣いていた

愛しい猫を失って泣いた


涙が枯れ果てても泣いた



そして悲しみの果てに思い付いた


“愛しい猫を取り戻そう”と


それから、この森でずっと探している


“愛しい猫を取り戻す方法”を

愛しい猫の躯は腐らないように魔術で時を止めた


雪や雨が降っても平気なように“砦”を建てた


誰にも邪魔されないように“砦”に目くらましを施した



魔術の研究をしている内に

何時しか街で

『森には悪い魔術師がいてこの世界を滅ぼそうと企んでいる』

と噂が広まった


“世界”などどうでもいい

自分はただただ、愛しい猫に会いたいだけ

たったそれだけしか望んでいない



“記憶”の中に死者を蘇らせる魔術があった


けど、

あんな醜い姿に愛しい猫をしたくない


もっとずっと



完璧な姿で愛しい猫を蘇らせる



その為なら何でもする



例え他の猫を手に掛けることになっても



“感情”は“涙”と一緒に枯れてしまった


だから、何もない


在るのは“願い”だけ



今日もまた魔術の本を捲る

“願い”を叶える為に


“愛しい猫の声を聴くために”

きっと彼はなら、目覚めて一番最初に


『馬鹿猫が』


と呼んでくれる


それを信じて、本を捲る






でも、“心の底”で分かっている


“完璧な物など何一つない”


それでも願わずにはいられない





歴史は繰り返す


同じことを何度も何度も何度も……


それでも自分で止めることは出来ない



運命は自分一人では変えられない



哀しい猫は呟いた



「救ってくれ」




そして猫は今日も続ける

滑稽な運命を





end
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