Nitro+CHiRAL

□A promise
1ページ/6ページ

蓉司からメールが来た

それは、俺が退院してから1日経った日曜日の昼だった

メールの内容は極めて簡素で、何の絵文字も顔文字もない、本当に文字だけのメールだった


用件は、約束を守りたいから今から3人で軽く会わないか。という内容だった

正直、3人というところに微かな引っ掛かりを覚えたが、蓉司から誘ってくれることなんてなかなかないので、すぐに返信をして家を飛び出した



待ち合わせ場所は、学校の最寄り駅の改札口

急いで電車に飛び乗り、駅の改札口に行くと2人が既に待っていた


「蓉司!」

定期で改札機をくぐり、名前を呼ぶと蓉司ともう1人……城沼が振り返った


「睦…久しぶり……悪かったな。急に呼び出して………もう、体平気なのか?」

蓉司が少し心配そうに顔を覗き込んできたから


「平気!平気!睦様、完全復活!」

と言って、Vサインをして笑顔で応えると


「そうか………良かった」

蓉司は安心したのか微笑んだ


「………城沼も久しぶり………」

城沼をちらりと見て声を掛けると


「あぁ………」

たった一言、素っ気ない返事が返ってきた

「………。」

やっぱり、あんまり好きになれないと考えていると


「出歩いて平気なのか?」


「へ?」

一瞬、何を問われたか分からなかった

抑揚のない口調だったことより、さっき素っ気ない返事を返した口からそんな言葉が出ると思わなかった


「あ、あぁ……平気平気!」

ちょっと、間を置いて返事を返す

「そうか……。」


口調は素っ気ない口調だったが、少し城沼のイメージが変わった気がした


「あれ?そう言えば、何で2人とも制服着てんの?」

今日は日曜日のはずだから学校は無いはずだ
部活動ではない筈だ、蓉司は部活動をしていない

疑問に思って訊ねると、蓉司がハッとした顔になった

「これは………その………」

蓉司が応えにくそうにしていると

「忘れ物を取りに来た……」

横から城沼が応えた

「忘れ物?」

「あぁ………」

城沼がコクリと頷く


「ふー……んじゃ、どっか遊びに行きますか
どこ行く?」

忘れ物のことは特に気にならなかったからそのまま流した


「そうだな………」

蓉司が考え込む
ここら辺じゃあ、遊ぶ場所なんて限られてるからきっと移動するんだろうと思っていると、蓉司から意外な言葉が返ってきた


「じゃあ、こないだ行ったファーストフードの店………あそこがいいな」


「え?蓉司、腹減ってんの?!えっ?頭打った?」


蓉司は食が細く、薦めても全く食べない。だから、ファーストフードに行きたいなんて頭でも打ったかと思った


「失礼な……頭を打ったわけじゃない………ただ、どこかで座って話したいだけだ……ダメか?」


「いや、いいけどさ………蓉司がファーストフード行きたいなんて……明日、雪でも降っかなぁ〜」


少しおどけて空を見る


「バカ……まだ初夏だろ………」


「アハハハ
夏に雪なんて珍しいじゃん
じゃあ、行きますか!
ん?そういえば、城沼ってファーストフードとか行くの?」


ファーストフードへと歩きながら、今まで黙ってた城沼へ話し掛ける


「………偶に行く」


「偶にかよ!え、まさか城沼も蓉司と同じか!?食が細いとか?!」


「違う……別に大好きってわけじゃないから……そこまで行かないだけだ……」


「うっわぁ………健全な男子高校生はファーストフード大好きなはずなんだけどなぁ〜……俺なんか毎日行ってるぜ?」


「毎日は……ちょっと行き過ぎじゃないか?」


「蓉司たちは偏食過ぎんだよ!」


他愛もないことを言い合ってる内にすぐ馴染みのファーストフードに着いた



「うっわぁ〜……なっつかしー!この香り………ソロモンよ俺は帰ってきた!」

暫く入院してたせいか、ファーストフードの香りが酷く懐かしく、美味しそうに思えた


「でも、病み上がりだしな………蓉司は何にするー?」


「………アイスコーヒー……」


「またそれかよ!

蓉司……本当に食べないと………骸骨みたいになっちゃうぜ?只でさえ、蓉司細くて白いんだから…………」

「食欲がない………」


「蓉司………せめて、ポテトだけでも………」


「あまり好きじゃない……」


蓉司はそう言って、さっさとアイスコーヒーを注文してしまった


「はぁ……あんなに食べなくて夏保つんかなぁ………城沼は?何にする?」

蓉司のことは諦めて、城沼に目をやる


「……ハンバーガーのセット……」


「………」

「………。」

「………え?だけ?」

「あぁ………」


城沼はさも当然のように頷いた


「いやいやいや!少ないだろ?!普通はもっと食べないか!?」


「コレが普通……だろ?」


「え、俺ら育ち盛りだぜ?!ちゃんと栄養を採らないとさっ!」


「ファーストフード意外でちゃんと採ってるから別に平気だ……」


城沼の声が少し呆れたような声なのは気のせいだろうか


「にしても……昼食には少なくねェ?
うーん……まぁ、いいか。んじゃ、俺は……オメガミートバーガーのセットでポテトをLにして、後単品でハンバーガー2個とナゲット1つにチョコサンデー1つ……後……あ、でも俺病み上がりだしなぁ……こんくらいでいいか……」


ふと、視線を感じ振り返ると城沼がこちらを見ていた

「………お前……」


「ん?何?」


「………ブラックホールか?」


「はぁ?!」


城沼は真顔のままだった
今のはジョークだったのか?




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ