Nitro+CHiRAL

□One eternal
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哲雄とこの密着した状態から幾ら経っただろうか………

数分……数時間………いや、数秒なのかも知れない

最早、躯の輪郭は癒着仕切って完全に溶け合ってしまった

思考もぼんやりとしか働かない

微かに手に力を入れようとしても、ぴくりとも動かない

筋肉の働きが鈍っているのか、それとも溶け合ってしまったからなのか

この分だと、繋がっている部分も完全に溶けて繋がっているだろう

嬉しいとも哀しいとも思わない………否、思えないのか
だが、不思議な高揚感だけは蓉司の頭の中でふわふわと漂っていた


ここまで完全に癒着してしまったら全ての感覚が無くなり、『純成』として形成されるのも時間の問題だ

蓉司は鈍りきった五感をフルに使って、哲雄の呼吸と鼓動を感じ取ろうとした


微かに自分とは違う鼓動が聞こえ、自分のそれと合わさって一つになる様にゆっくり着実に同調しようとしていった


最期にもう一度、あの声が聞きたくて

きっと、言葉にも音にも……空気にも成らない声で言葉をつむいだ


──…哲雄……──


もう少しで心音が同調する……自分は自分でなくなり、哲雄と融合したこの躯から新たな生命が産まれる………


──……蓉司…──


ふと、一番聞きたかった声が聞こえた気がした

その瞬間、2つの心音が完全に同調し、1つの心音となり大きく脈打った



やっと、1つになったのか


蓉司はその感覚をとても暖かい気持ちで感じながら、ゆっくりと思考を沈めていった




END
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