第一部 鉄の少年

□第5章 少年の戦い
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早朝、屋根の上。



「ふぅー……」



日課の体操を終えたオレは、体からゆっくりと力を抜きながら顔を上げ、ぼんやりと空を眺める。


だんだん明るくなっていく空は、雲一つなく晴れ渡っている。


しかし、そんな晴れやかな空とは裏腹に、オレの心は淀んでいた。


それと言うのも、オレの心に僅かに引っかかるものがあるからだった。





──あれから、もう一週間だ。



この一週間、吸血鬼やヒバリに動きは全くと言って無く、ネギ君もオレも問題なく無事に過ごせていた。


しかし、あの時の吸血鬼の言葉が引っかかって仕方ない。


オレの取り越し苦労ならいいんだけど……。



──ぐうぅ……。



考えながらまた息を深くついていると、腹の虫が元気な声を上げた。



今は考えても仕方がないか。


後手に回るのは趣味じゃないが、奴らの動向を知る方法もない。


ここは、奴らが動くのを待つ事にしよう。



そう考えながらオレは、今はとりあえず朝ご飯だ、と屋根から降りる事にした。





─────。





「闘我様」


「はい?」



朝ご飯を食べ終え、いっぱいになったお腹をさすりながら一息ついていると、テーブルを挟んで向かい側に座った秋さんが話しかけてきた。


返事をしながらそちらを向くと、秋さんは続ける。



「今日、学園都市で停電があるのは覚えていらっしゃいますか?」



停電?


……ああ、そういえばそんな物があったな、麻帆良には。


今の今まで忘れていたけど、言われて思い出した。



麻帆良学園は、このだだっ広い敷地に張り巡らされた電気系等のメンテナンスのため、年に2回、大規模な停電があるのだ。


メンテナンスの作業時間は夜の8時から12時までで、優に4時間にもなる。


その間は一切の電気が使えなくなるため、学園都市は暗闇に包まれ、直前には住民達に外出自粛の旨が伝えられる。


その2回の停電の内、今日が1回目、ということらしい。



まあ、この学園都市は電気が無いと逆に不便になるし、進んで外に出る人はいないだろうけど。





「──ですので、今日は早めに帰って来て下さいね」


「え、あ、はい」



い、いかん。


停電の事を思い出していた間も、秋さんは話を続けていたらしい。



しかしオレは、そのほとんどを聞いていなかった。


しかも、普通に返事しちゃったし。



ま、まあ、一番大事だと思う所は聞いていたはずだから、多分大丈夫かな。


というか、そうでないとやばい。



「闘我さま、どうかしたんですか?」



秋さんに返事をしながら青ざめていると、隣に座った葉ちゃんが不思議そうに覗き込んできた。



「い、いや、何でもないよ」


「そうですか?」



オレはごまかすように返しながら、食器を持って台所へ向かった。


 
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