呟く side R


□呟く side R
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「へ?あ、はい!好きです。大佐、オレと付き合ってください!!」

ハボックから告白されたのは軍儀から戻った昼下がり。中尉と執務室に戻ると普段は考え事なんかしないようなヤツが一人で百面相をしているのだから可笑しくて仕方なかった。
で、だ。声を掛けてみたら案の定、碌なことを考えていなかったわけで、中尉はあまりの可笑しさに執務室を飛び出していく始末だ。
しかし、私とてハボックに好意を抱いていたのは事実だ。
普段はのらりくらりとしているヤツであっても有事になれば使い勝手がいいのはこの上も無い事実だ。実戦になれば私の右腕として役に立っているのも事実だ。
実際、こいつに何度助けられたか数知れない。まぁ、それは差し置いてもハボックは私のことをよく見ていた。
それが部下としてなのか恋愛対象としてなのかは甚だ疑問だったのだが。

まぁ、口うるさいのは中尉も同然だったが、こいつは私のプライベートにまで口を出してきた。やれ菓子を食事代わりにするなとか、やれ家に帰ってきちんとベッドで寝ろとか。護衛のついでにトイレを貸せだの何だの言いながら私の家に上がりこんで指図までしてくるんだ。
しかし、ヤツは口だけじゃなく夕食を作ったり、洗濯物が溜まっていれば見かねて洗濯したりと行動にうつすものだから、ついお前を頼ってしまいたくなるじゃないか。
まさか、この私がそれが恋だと気づくまでにこんなに時間がかかるとは…。
いや、世話を焼いてくれるから好きなのだとか、使い勝手がいいからとかそんな理由では決して無い。断して無い。
あの犬のような眼で見られると放っておけないのだ。
軍用犬のようなデカイ図体をしているクセに碧い澄んだ眼で私を見つめてくるのだ。
「うん、いいぞ。」
考える間もなく私の口からは了承の言葉が滑り出ていた。
いや、実際は間が空いていたのかもしれないが、何と言うか私の中の感情がそれは嬉しくて嬉しくて言葉にならないほど感極まってしまって言葉が出てこなかっただけで。

「へぇ〜、天下のイシュヴァールの英雄、ロイ・マスタングがねぇ…。」
ヒューズがグラスをカランと鳴らしながらウイスキーを呷った。
「で、実際のところどうなのよ?お前さんの正直な気持ちはさ。」
「だって、碧い眼のシェパードなんて珍しいだろ?」
ふふっと微笑むとグラスの中のウイスキーを呷って呟いた。
それが、ロイの照れ隠しであることはヒューズは充分承知していた。

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