浴衣(ハボロイパラレル)


□浴衣(ハボロイパラレル)
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「シン国にいる友人が着物を送ってきたんだけど、みんな着ないか?」
ふろしき包みを執務室のデスクに広げると、絣や絽の着物が幾枚かある。
「あら、素敵ね。」
ホークアイが涼やかな柄の着物を広げると肩に掛けてみる。
「これって女性用とか男性用とかあるんですよね?中尉は着たことあるんですか?」
「ええ、女性用は帯の幅も広くて柄も豊富よ。」
「へぇ〜。ひぃ、ふぅ、みぃ…と。」
「どうかして?」
「いや、女性用と思うんですがね、二枚あるんですよ。中尉、実は相談なんですけど……」
ハボックが何を相談していたかは容易に考え付きそうだがそれはおいておくとして。

その日の夕方、軍儀が終わり執務室に戻ったロイはホークアイからこう告げられた。
「大佐がいらっしゃらない間に中将からの命を受けまして潜入捜査を行うことになりました。急な話ですが変装の準備をしますのでこれからハボック少尉の家に向かってください。」
「潜入捜査?私は聞いていないぞ?」
「ですから大佐がいらっしゃらない間に勅命がありまして…。」
「そうか、仕方ないな。」
ホークアイのしれっとした態度に若干頬を膨らませながらだが中尉の言うことなら間違いは無いだろうと渋々とハボックの家に向かうことになった。

「出来上がりました。ご覧になりますか?」
手鏡を差し出すと、そこに映っているのはまぎれもなく、異国の着物を着た美女。
「ちょっと待て!中尉、これはどうゆうことだ?!」
涼やかな藍色の着物に朱や赤の鮮やかな鯉が描かれている着物に帯は黄色の幅広のもので、頭にはウイッグをつけさせられロングヘアーをひと括りにした髪を和風のバレッタで留めてあり、頬は薄っすらと紅を差し唇にも朱色の紅が差されていた。
「素敵です、大佐。」
ホークアイは片手を頬に当て、ほぅっとため息を零すとにっこりと微笑んだ。
「中尉、これは何の間違いだ?」
「間違いではありません。少尉、もう良くてよ?」
ホークアイが声をかけると、隣の部屋で待機していたであろうハボックが姿を現した。
「ハボ…?!」
「大佐…?!」
キラキラと輝いた視線を向けながらロイを見遣ると、ハボックは天にも昇るような心地だと内心呟く。
「では、お二人で潜入捜査をお願いします。」
嫌がるロイを二人がかりで車に乗せ車を走らせると、とある場所で二人を下ろし走り去っていった。
「ハボック!潜入捜査とゆうのは本当なのか?私は何も聞いてないぞ?一体、何の捜査なんだ?」
「しー!そんなデカイ声で喋らんでくださいよ。ほら、もっと笑って。敵を欺くにはまず味方からってゆうでしょ?」
いくら女装をしているからといっても、声が男性の声のままではどこかに潜んでいるかもしれない敵にバレてしまうと妙な納得をしてハボックの手中にむざむざとハマってしまったロイは仕方なくハボックの腕につかまり一緒にそぞろ歩くことにした。
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