軍部の人間お断り


□軍部の人間お断り
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「大佐!大佐っ!今度はあれやりましょっ!」
「こら、公共の場で階級で呼ぶなと言っているだろう。」
走り出すハボックに腕を取られて露店の前まで来ると、そこは射的の店だった。
「おっちゃん、とりあえず10発ね!」
「あいよ!10発で1000センズだよ。お兄ちゃん、頑張って!」
店主がニヤリと笑いながら銃とコルクの弾を渡す。
「よし!ハボック、全ての的を落としてしまえ。」
「イエッサ!!」
店主から射的用の銃を受け取ると肩にあてがい狙いを定める。
「っし!」
発射されたコルクがうさぎのぬいぐるみの頭を掠めた。
「ありゃ?外れちまった。」
と、隣で構えた銃から発射されたコルクが見事にうさぎの眉間にヒットして台から転がり落ちた。
「甘いわね、ハボック少尉。」
ふっと微笑むと再び隣の貯金箱目掛けてコルクを放つと台から転がり落ちた。
「あ…中尉。さすがっすね。」
「射的用の銃は重心が後にかかるように作られているのよ。的に当たらないようにね。それと弾のコルクは本物の銃弾より軽いことを頭に入れなくてわね。」
的を見据えたまま、再びコルクを放つと商品の中で一番大きなクマのぬいぐるみを一発で叩き落した。
「すげぇ…。」
「おい、ハボ、ぼやぼやするな!私はあの中ぐらいのクマのぬいぐるみが欲しいんだ。しっかり狙え。」
後でロイがこそっと囁く。
「はっ…!中尉、ご教授ありがとうございます!」
浴衣姿のままピシッと敬礼をすると、再び的に狙い定めた。
(重心が後に…なるほどな。これじゃ当たらねーな。……若干前のめりでコルクの軽さと的の重心の位置を狙い打つ!!)
ハボックの銃から放たれたコルクは緩い放物線を描いてロイが欲しがっていた中ぐらいのクマにヒットした。
「あ、当たった…!」
しかし、店主は横に首を振る。台から落とさなければ手に入らないのだ。
再び、中ぐらいのクマに狙いを定めコルクを放つとクマの眉間にヒットしてグラグラと揺れながら台から転がり落ちた。
「っしゃぁっ!!」
ガッツポーズを取るとロイを振り返りニカッと笑う。それに応えるようにロイも微笑みながら頷いた。
隣を見ると残弾2発でかなり重たそうな陶器で出来たブタの貯金箱を狙っている。1発目で後方へずらし、2発目で台から転がり落とした。すべてホークアイの計算だったようで見事だとしか言いようが無い。
店主も渋々とホークアイが落とした商品を袋に入れるとぼやきながら手渡した。
「姐さん、敵わねーなぁ。全弾命中したのはお客さんが初めてだよ。」
「ふふっ、ありがとう。これで姪っ子や甥っ子達に帰省のお土産が出来たわ。」
大きなぬいぐるみも入って、まるでサンタクロースのような袋を担ぐとハボックとロイの方に振り返りニッコリと微笑みながらこう言った。
「それでは、お二人とも。休暇明けにお会いしましょう。」
涼しい顔で袋を担ぎながら立ち去るホークアイを呆然と見送る二人を見ながら店主が感嘆の声を上げる。
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