軍部の人間お断り


□軍部の人間お断り
2ページ/2ページ

「っかー!!漢前だねぇ!!」
「たしかに…。」
ぽそりと呟いたロイの一言がハボックの闘志に火をつけたのは言うまでもない。
その後、ハボックは全弾打ちつくすと再び弾を買い、全弾商品に命中させ店の商品を攫う勢いだった。ロイに制されて漸くハボックが射的を止めた時には店の9割がたの商品が台から転がり落ちていた。
これには集まった他の客もやんややんやの喝采で、当然持ちきれない商品は集まっていた子供たちに分配された。
勿論、ロイのクマのぬいぐるみを除いては。

「バカもん!あんなに商品を取りまくってどうするつもりだったんだ!」
浴衣の袖口に腕を仕舞いこみ腕組みをしながらロイが歩く。
「え…、だって大佐が全部取れって…。」
「言葉のアヤとゆうもんを知らんのか。まったく…。」
「でも、クマのぬいぐるみはしっかり取りましたよ。これ、どうするんです?」
「これはお前の代わりだ。」
「へ?」
「…お前が夜勤や出張でいない時はこれを抱きまくらにするんだ。」
ぷいっと顔を逸らしたロイの耳が染まっていたのを見るとふふっと微笑みながらロイの肩を抱きしめ耳朶にちゅっとキスをする。
「じゃあ、今夜はこのクマはいりませんね?」

その晩、ロイの家のリビングにクマのぬいぐるみが鎮座していたのは言うまでもない。
そして、翌年から射的屋には「軍部の人間お断り」と張り紙がしてあった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ