中編
□白雨の空物語 外伝一
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雨が降る。
晴れた空から音もなく。
静かに優しく。
雨が降る。
+白雨の空物語 外伝一+
「――沖田、起きろ」
双眼鏡から目を離し、土方は後ろで寝ている総悟を見やった。
総悟はアイマスクを上にずらし、面倒そうに土方を見返す。
「行くぞ」
「…へィ」
気の抜けた返事を返し、総悟は立った。
沖田総悟――。
いつ頃から意識し始めたのだろう。
その存在に。
土方は雨の降る空を見上げ、そして隣を見た。
雨水で濡れた栗色の髪が、同じように空を見上げている。
吸い込まれそうな紅い瞳に、見て欲しいと思った。
それはいつ頃?
「――なんでさァ」
土方の視線に気が付いた総悟は、不審そうに眉をしかめた。
「…なんでもねェ」
慌てて視線をそらす。
どこか重たい雰囲気が流れた。
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