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□気紛れのグリム
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日曜の昼下がりというのは、何かしらの予定が無い限り、かなりの暇が出来る。
その過ごし方は人それぞれだが、マカはもっぱら読書に専念している。



「ソウル、鍋にシチュー作っといたから。適当な時間に食べといてよ?」

ドアにノックしながら、部屋の内で未だベッドに転がっているであろう相棒に声をかける。分かったやら分かっていないやら、間延びした意味の無い声のみが返ってきただけだ。
休みの朝(既に昼過ぎだが)はこれだから、と溜め息をつきつつ、マカは部屋の前から立ち去る。
ソウルは基本的に休日の午後まで寝て過ごす。前日の夜中に遅くまで起きているせいだ。彼にとっての休暇はむしろ休日の前夜であるかのようだ。




よく晴れた青空の元、街は普段より少しばかり活気を削がれている。
対して公園の方は子供達が作る溌剌とした空気で満たされているだろう。マカの行き先はその付近に建つ図書館である。
さほど遠い距離ではない。散歩がてらのんびり歩く。秋の気配を孕んだ涼やかな風にツインテールが揺れる。
過ごしやすい季節だ。こういう日は騒がしい知人とは出会いたくない。一人静かに羽を伸ばすのが、マカにとって何より有意義な休暇の使い方だ。



とはいえ…

邪魔が入らない保証はどこにもない。



「Wohin gehst du,Rot−kapp−chen!?」

「……は?」

マカにはそれが自分に向けられたものなのか、それ以前に言葉の意味すら分からなかった。しかし聞き覚えのある声につい足が止まり、振り返ってしまう。

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