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□黄金Repeat
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マカはとりあえず拳を振りかぶった。
が、一撃が届く前に、その細い手首は武骨で大きな手の中に収められる。強く掴まれる痛みは殆ど無いにも関わらず、取り返したくても満足にもがくことすらままならない。
「こ、のやろっ!」
「待て待て待て、そう暴れるな」
必死のマカに対し、宥め透かすような声音は聞き分けの無い子供に対するそれだ。混乱と危機感にムカもついて、今度は足を振り上げる。狙うは、男ならば絶対的な急所。
「おっと!そこは勘弁してくれ」
爪先が届く寸前に空いた掌に受けとめられ、やはり反撃は叶わなかった。しかも足首を掴まれた拍子に、床に取り残された方の爪先が滑り、支えの役目を放棄する。
「きゃっ!」
片腕と片足でぶら下げられた不安定な状態、しかも足はそれなりの高さまで上がったままな所為で、あられもない姿を曝しそうになる。
だがその寸前で腕と足を解放され、一瞬の落下感の後ゴツイ腕に腰が引っ掛かった。
「嫁入り前のパンツを暴く程俺は人でなしか?いいや違うね!俺は見た目より紳士さぁ!」
「パンツ言うなエロ魔眼!離せ!!」
暴れるマカの手足をものともせず、魔眼の男は小柄な細身を肩に担ぎ上げる。
「ぎゃーっ!降ろせ降ろせ降ろせー!!」
「まあそう言うな、取って食ったりはせん。すぐ帰してやるから」
渾身の抵抗も虚しく、腰をしっかりとその広い肩に固定されたまま、マカは窓から空中へダイヴすることになる。
「おいマカー?何騒いでン−−…あ?」
ソウルがマカの私室のドアを開いた時には、既に室内は無人。
全開の窓から遠慮無く吹き込む風に、カーテンがはためいているだけだった。