姫 時々 王子

□1! 「そうか、ならいい。有難う、助かった」
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「あーくそ荷物重い・・・さっさと乗るか・・・」





 先程の少女が、黒く重そうなキャリーバッグを牽きながら呟いた。
 所々ハネている肩に付くか付かないか程の茶色の髪と、黒い目を持つ少女の顔が顰められている理由。
 それは、
 

 余りにもこのホームが混んでいるから。


 ホグワーツの生徒や新入生の他に、親族等も来ているので仕方が無いのだが。
 どうやらこの少女は、人一倍このように混んでいる所が苦手なようだ。
 溜息を吐いた後、面倒臭そうにキャリーバッグをガラガラと牽きながら汽車に向かって歩き出した。
 とにかくこの場から離れたいらしい。








 人込みを縫いやっと汽車まで辿り着いた少女は、キャリーバッグを上げるのに苦労しながらもなんとか乗り込んだ。
 だが汽車の中もホーム程ではないが混んでおり、再び少女の顔を顰めさせた。



「・・・・・くそ・・・空いてるコンパートメントあんのかな・・・」



 そう呟くと、渋々キャリーバッグを轢きながら空いているコンパートメントを探し始めた。















「・・・・・・ない、な



 数分、もしくは数十分歩き回ったが、どこにも空いている席は見当たらない。
 どうしたものかとしばらくその場で考えを廻らせていた少女だが、



「・・・・・・・仕方ないな。戻ってみるか」



 と、くるりと振り返ると再び歩き出した――――――――歩き出そうと、した。




「・・・・・・・・っ!!!?」






 何かを踏んで、派手にその場で転んでしまったのだ。





 顔面を床に打ち付けるのはなんとか腕で防いだが、その代わり右肘をこれでもかと言うほど強打してしまった。



い゛ぃ・・・・・・・っつ・・・・・・・!!!?」



 あまりの痛みに、無事だった左手で強打した右肘を抑えながら思いっきり顔を顰める。
 すると、頭上から慌てたような心配したような複雑な声が降って来た。






「うわっごめん!大丈夫かい!?」

「凄い音がしたけど・・・・だ、大丈夫?」

「うっわー・・・さっきのは痛そうだったな・・・おい、大丈夫か?」






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