Scream
□What is your name?
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ザクザクザクザク。
突き出した硬そうな岩が並ぶ、道とも言えない道並。
大分歩いた。
目指してるのはアジト。
メデューサ様と、エルカと、フリーと、僕。
あまり揃わないから、こう云った団体行動は新鮮だ。
『オイコラクロナァ!』
「…なに?」
耳元でやんややんやと。
夜だから近隣迷惑。
だけどそうも言う前にラグナロクが腕を振った。
そして、振った手をそのまま勢い付けて、ある一点を指差す。
『アレがナンだかわかるかァ!?』
「?…フリーでしょ?」
そう、ラグナロクが指差したのは前方を歩いている背格好の高い男性、フリーだ。
『そうだ!フリーだ!』
「…訳わかんないよぅ…」
『話は最後まで聞けェ!このとんちんかんの安易脳みそヤロォが!』
「うじゅ〜……いきなりそんな日本語使わないでよ…博識なラグナロクなんてどう接したいいのか分からないよ…」
『五月蝿ェ!クロナのクセに生意気だゴラァ!』
ドラ○もんのスネ○じゃないんだから……。
言い出したらこのまま終わらないのが目に見えてたから、あえて何も言わないけれど。
『フリー、フリーってのは仮名だよな?』
「え?うん、そう言ってたよ?」
『本名はなんだと思う?』
本名。
何を言っているんだか。
本名を言いたくないから、仮名を使うんだろうに。
でも、なんで本名を言いたくないんだろう。
「………なんだろう…?」
『気になるだろ!?気になるよなァ!?』
「…気にならなくはないけど」
歩きながら何を話しているんだか。
前方の三人(ミズネ+α)に、遅れは取ってないけれど。
『オレなんか本名の事ァ考えたら夜も寝れねェ、上手く共鳴出来ねェのなんのって!!』
「ラグナロクは夜寝ないだろ!」
『何ムキになってんだよォ!!』
「……どうせ、僕に聞いて来いって言うんだろ?」
『当たり前だ!オレが他に誰に頼めると思ってんだテメェはよ!!』
「痛ッ、…逆ギレしないでよ〜…理不尽だよ〜…!」
ぽかすか、なんて可愛いモンじゃない殴打。
頭を抑えれば、血管の内出血によって出来る痣になるなんて、ラグナロクがいる時点でまず有り得ないから、見た目には残らない痛みがただ残る。
『オラ、聞いて来いゴラァ!』
「うぅ……理不尽だ…」
ぐすぐす、泣きながら行くが、追い付くまでには涙は引いている。
否、引かせた。
「…ねぇ、フリー」
「ん?なんだ?」
さっきから何かと騒いでいたが、とさりげに付け加えられれば、ラグナロクも僕も合わせたように苦笑をする。
「あの、さ……えと」
「?」
後方から話掛けたが、歩幅を合わしたフリーが、いつの間にか隣にいる。
そのまま、微妙な進み幅のまま歩く。
もう、どう接したらいいのか――のくだりなんか言えないくらい、どう接したらいいのか分からない。
『安直に言うがよォ!テメェ本名なんだよゴラァ!!』
「あ、ラグナロク…!喧嘩腰はダメだよ!」
いきなり口を挟み、背中から跳び出たラグナロク。
押さえ込むように腕を回すが、やはり逆に押さえ込まれてしまう。
押さえ込まれれば、半ば諦めて押さえ込まれた状態そのままで、フリーの返答を待ってみる。
「………」
「俺の本名は、200年前に魔婆に捨てられた。俺は13番魔眼の男だ」
そうだけ言って、フリーは下を向く。
立った髪が顔同様に下がっているのが、妙に不思議に感じる。
『つまりはテメェも忘れたのかァ!?ボケだな!!ハッ!』とか、ラグナロクも言ってたけど。
僕はあえて"くうき"を読んで、歩幅の間隔を小さくして、フリーより5、6mくらい後ろに下がって見た。
(自分の名前が捨てられたら、どんな気持ちだろう)
名前、って。
だって親に付けて貰う訳だろう。
自分の体を表す名を奪われたら、僕はきっと分からなくなるから。
「……ラグナロク、」
『んだよクロナァ!!?テメェ勝手に下がりやがって―――』
名前。呼ばれた事に新鮮な気持ちを感じる。
「フリーは、フリーだよ」
「ぁあ!?なんだなんだ!謎々かァア!?生意気なんだよテメェはよォ!!」
「痛ッ、いた……いたいよ!!」
ただ、今着いて来てるのは"フリー"で。
200年前に捕まったのは"フリー"の前のフリーだから、って思ったんだけど。
言ったら「当たり前だろがぁ」とか言われるんだろうから、止めとく事にした。
………余談だけど、ラグナロクって逆から三文字を読むとさ………。
いや、まさかメデューサ様が僕の名前をそんな安直な名前の付け方をする訳ないよね、うん。
………うん…。
→.......後書き