ドルチェ

□accelerando
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以前は週に一回だけだったのに、最近では図書館へも頻繁に来るようになっていた



ツナさんと知り合ってからはあのお店によく通うようになったからだ



今日も三日前に来たばかりなのにまた図書館に来ている



本棚と本棚の細い道を歩きながら今本を物色していく



この間まではひとつのシリーズを一気に読んでいたけれど、それもつい昨日読破してしまったから何か新しいものを探している



キョロキョロしていると目につく赤い背表紙の本が上の方に見えた



なんなく気になったので手にとってみようと手をのばすけど届かない



背伸びしてみても届かない



ぴょんぴょん跳ねてみても後ちょっと届かない



後ちょっとなのに



どうしよう



「危ないですよ」



『え?』



振り返るより早く後ろから伸ばされた腕がいとも簡単に本を引き抜いた



「はい、どうぞ」



にっこりと人好きのする笑みを浮かべて私に本を差し出す青年



…どこかで見たことあるような気がする



『あ、ありがとうございます』



「取れない本があったら今度からは声かけてくださいね」



『え?』



「俺、この図書館の司書なんですよ」



『あ…!』



どこかで見たことあると思ったらそういうことだったんだ



勝手に納得していると彼は私の持っている本に目をやった



「その本、面白いですよね」



『私、まだこの本読んだことなくて…』



「そうだったんですか。
それ、俺の一押しですよ。
是非読んでみてくださいね」



もう一度にっこり笑うと彼は仕事に戻っていってしまった



私は手元に残った本をじっと観察する



背表紙と同じようにくすんだ赤い表紙に書かれた題名はアウトブレイク



多分、普段私が読むようなジャンルじゃない



でも、さっき司書さんがおすすめしていたし、まだ時間もある



せっかくだから、時間まで試しに読んでみよう



その本を小脇に抱えて図書館に設置されている机に向かった







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