ドルチェ
□elegiaco
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「おやおや綱吉が読書なんて珍しい」
談話室のソファに座って本を捲っていると不意に後ろから投げ掛けられた声
自室で読めばよかったと内心思いながら本から視線をあげると目に入るオッドアイ
「俺だってたまには本くらい読むよ」
「何か理由でもあるんじゃないですか?
そう、例えば…誰かに影響されたとか」
やっぱり骸は目ざとい
確かに俺は、乃慧が読書が好きだとそれはそれは幸せそうにはにかんで言ったから、本を読む気になった
きっと骸はここ最近の俺の様子でなんとなく、俺に何が起きたかわかっているんだろう
だからと言って、簡単に白状したりはしないけど
「別に理由とかないけど?
なんとなくだよ」
「そうですか。
それならそれでいいですけど。
それよりこれ、報告書です」
「お疲れ。イタリアまで行かせて悪いね」
「そう思うならそろそろ駄々こねないでイタリアに本腰すえて落ち着いたらどうなんですか。
すっかり日本のこの基地に居座って。
おかげで僕らはイタリアと日本を行ったり来たり、いい迷惑ですよ」
嫌味たらしくに肩をすくめて見せる骸に俺は返す言葉もない
本当だったら今頃、俺はイタリアにいるはずなのだ
我が儘を言って、それに守護者の皆を付き合わせているのは紛れもなく俺
「まあ…綱吉の気持ちもわからなくはない…ですけどね」
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