ドルチェ

□a poco
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「隣、いいかな?」



不意に声をかけられて顔を向けると目の前にはツナさん



『どうぞ。というより、ツナさんを待ってたんですよ?約束したじゃないですか』



少し首を傾けてきいてみるとツナさんは少し固まった後頬をほんのり赤く染めた



『どうかしました?』



「え?ううん、何もないよ」



あははと笑って誤魔化しているのは明白だけど特に言及はしなかった



今私たちは先週約束した通り例のカフェにいる



先に着いていた私は本を読んでツナさんを待っていたのだ



ツナさんが座ったのを確認してから私はふと気になったことを訊いてみた



『ツナさんはいつも奥の席に座ってましたよね』



今はいつも私が座っていた窓際の席に座っている



「うん」



「なんで奥に座ってたんですか?
窓際嫌いなんでしたら、あっちの席に…」



「ああ、違うよ。嫌いとかそういうんじゃないんだ」



ツナさんが少し困った様子で目を泳がせた



「なんか端って落ち着かない?」



『そうですね。私も結構隅っこ好きですよ』



そう返すとホッと安心したようだった



名前を偽名でと言われた時となんだかおんなじ感じがした



きっと私は何か訊かれたくないことに触れそうになってしまったんだ



気にならないわけではない



だけど、私には訊く権利も勇気もない



だから気付かないふりをした



「それより、今日はニコニコしてて嬉しそうに見えたけど何かあった?」



『そんなに顔に出てますか?』



恥ずかしくて頬を両手で包む



無意識に緩んでいたらしい



『明日、遊びに出掛けるんです』



「二人で?」



『はい!』



「それってさ…」



『どうかしました?』



「いや、何でもない」



『その人、ツナさんと同じように私を助けてくれたんです。
凄く明るくてかわいいこなんですよ』



「………かわいい?」



『はい』



「……女の子?」



『はい』



ツナさんは大きく息をつくと



「なんだそっか…女の子ね、うん、そっか」



『どうかしました?』



「気にしないで。
…それで?どこ行くの?」



『ケーキバイキングです。
苺のフェアをやってるんですよ』



「そっか、よかったね」



『はい!でも…』



「どうした?」



ツナさんが首を傾げた



どうしようか



訊いてしまおうか



だって私には、他に訊けるようなひとがいない







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