ドルチェ
□lento
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小さい頃から本が大好きだった
自由に生きたくてもそんなことできない私には、本が広い世界を知るための唯一の方法だった
いろんな世界観に入り浸って、まるで自分が体験したかのように思わせてくれるから、自分が実際に体験できなくたって、それでよかった
それは大きくなっても変わらなかった
大学生になってからもずっと私は本を読み続けている
週に一回だけ、大学からの帰り道に図書館に寄り道をする
そしてその帰り道、大通りから一本それた道に隠れるようにそっとある喫茶店に行くのが日課で、同時に私の生活で唯一の自由な時間だった
そこで私はあなたに出会った
静かな喫茶店の一番奥の窓際が私の特等席
その反対側、隠れるようにある壁際の席があなたの特等席だった
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