ドルチェ

□amoroso
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私がボンゴレでお世話になるようになって、もう2週間になる。
幹部の皆さんとはもうすっかり顔なじみになっている、と思う。
できることからボンゴレのお仕事を手伝わせてもらっているので、書類を渡しにいく機会が多かったのも、きっかけになっていたんじゃないかな。

珍しく雲雀さんも一緒の夕食の席で、皆さんと楽しく会話していると、山本さんがしみじみと呟いた。

「それにしても、ツナはいい嫁さん見つけたのな」
『よ、嫁…っ!?』
「まだ籍はいれてないですよ、山本武」
「黙れ骸。俺達は婚約してるんだから同じようなもんだろ」

骸さんと綱吉さんの言い合いを止めるべきなのだろうけど、正直それどころじゃなかった。
嫁か…もうすぐ私は綱吉さんのお嫁さんになるんだ。
改めて実感すると、少しの照れと幸せが心に広がる気がする。
くくく、と押し殺したような笑い声が耳に入って、下がり気味だった視線をあげると、向かいに座っていたリボーンさんが笑っていた。

『リボーンさん…?』
「どうかしたのか、リボーン?」

綱吉さんが問い掛けると、皆の視線はリボーンさんに集まった。

「いや…ただノエルは心の中までかわいいんだなと思ったんだ」
『え?』

心の中?
どういうことかと隣の綱吉さんを見詰めると、彼は答えにくそうにしながらも説明をしてくれた。

「リボーンは読心術が使えるんだ」
『読心術?』
「うん。人の考えてることがわかるんだ」

しばらく意味がのみこめなくて固まった後、まさかとリボーンさんに視線を送る。
望んでいたのとは違う、こくりと頷きがかえってくる。

『…ええええぇ!?じ、じゃあ今まで考えていたこと全部ばれてるんですか?』
「ああ」

私、変なこと考えたっけ?
大丈夫だよね?

「大丈夫だ。ノエルの思考はほのぼので清らかだったぞ」

慰めか気を使ってかはわからないけど、リボーンさんはそう言ってくれた。
それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
両手で紅潮しているだろう頬をおさえる。

「でも、確かに綱吉は見る目あったよね」

それまでずっと傍観していた雲雀さんが、よく通る低い声で言った。

「え…?雲雀さん…?」
「珍しいよ。このこみたいな子」
「俺もそう思いますが…。雲雀さん、もしかしてノエルのこと気に入ってたりとか、します…?」

ちらり、切れ長な彼の真っ黒な目が向けられた。
思わず姿勢を正してしまったけど、彼の鋭い視線には、そうさせるだけの力があるのだと思う。

「さあね」
「さあねって…」
「まぁ、嫌いじゃないよ」
「な、ちょ、え!?」

なぜか慌てている綱吉さんをそのままに、雲雀さんは部屋から出ていってしまった。
本当、雲雀さんは雲みたいにつかみどころがないひとだな。

「…でも、雲雀くんが気に入るのもわかりますよ」
「うむ。極限その通りだな!」
「癒し系なのな」
『ありがとうございます』

社交辞令だとはわかっていてもやっぱり少し嬉しかった。
長い付き合いになる予定なんだから、できれば快く思われたい。
何より彼らは綱吉さんの大切な友人であり、仲間なのだから。

『私、今まで同年代の友達とかいなかったので、皆さんを楽しませるお話なんてできないとおもうんです。でもがんばるので、仲良くしていただけたらすごくうれしいです』
「クハッ!いじらしいじゃないですか!」
「かわいいのなー」
『な、何言って…』

からかわれてるとわかっていても照れてしまう自分が情けない。
お世話なんて受け流せるよう大人にならないと。

皆さんの視線から逃げるように逸らした先で、ばっちりと綱吉さんと目が合った。

『綱吉さん…』
「何?」
『何だか…怒ってます…?』

明らかにムスッとした彼がじとっとこちらを見詰めていた。

「別に怒ってないよ」
『そう、ですか…』

明らかにムスッとしているけれど、そんなふうに言われたらどうしようもなくなってしまう。私、何か気に障ることしちゃったかな。
きらわれたらやだな。

視線が落ちて、太股の上で組まれて両手を見詰める。

「…はぁ、だからお前はいつまで経ってもダメツナなんだ」

リボーンさんを見ると、やれやれと呆れているようだった。

「何だよリボーン」
「拗ねるのも妬くのもお前の勝手だがな、ノエルを困らせるな」
『やく…?それって…嫉妬、したってことですか?』

綱吉さんは虚をつかれたような表情を浮かべ、その数秒後顔を赤くさせた。

「お、俺は別に……いや、その通りだよ」

ああもうともらす綱吉さんに思わず笑ってしまう。

「笑わないでよ。確かに大人気ないけど」
『いえ、そうじゃないんです。…嬉しくて』

綱吉さんは普段大人びて落ち着いているから、恥ずかしがるのなんて滅多に見られないし、それに

『嫉妬してもらえるほど想われてるなら、幸せです。それに、安心してください。私は綱吉さんが一番です』
「ノエル…!」

綱吉さんの腕がのびてきた―――と思ったら

「いちゃつくなら余所でやれ」

向けられた銃口に顔を強張らせて綱吉さんは戻っていった。

こうやって大勢で食事をすることも、楽しく話すことも今までずっとなかった。
少し前までは、これからだってないと思っていた。
本当、人生何が起きるかなんてわからない。
でも、1年後も、10年後ももっと先も、綱吉さんといられたなら、私はそれだけできっと幸せでいられると思う。
そう思えるようなひとに出会えた奇跡に感謝しないと。

『綱吉さん、』
「ん?」
『今度、ふたりでまたあのお店に行きましょう?』

多分、綱吉さんは私の考えてることに気づいてくれてるんだと思う。
優しく微笑んで、頷いた。

「うん。約束な」

私たちが出会ったあの場所は、ずっと特別な場所だから。



amoroso



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亜実さまリクエストのdolce番外編でした。
結婚後のボンゴレ幹部との絡み、というリクエストだったのですが、いつか結婚後で続編か番外編を書きたいと思ったので、申し訳ありませんが結婚前になってしまいました。

リクエストありがとうございました!




 

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