ドルチェ

□forte
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呆然と目の前の女の人を見詰めているとツナさんの慌てた声がした。



「大丈夫か!?」



『あ、…はい』



大丈夫といえば大丈夫だけど…この状況は大丈夫っていえるのか疑問だ。



「お前、何してんだ」



はじめて聞くようなツナさんの低い声に鋭い視線。



私に向けられたものじゃないのに、ヒヤリとしてしまう。



「だ、だってこの女があなたをたぶらかしたんでしょう!?」



女の人が怯えながらそう言うとツナさんは面倒くさそうに溜息をついて彼女から視線を外した。



「ごめんな、何か拭くもの借りてくる」



『え、あっ、大丈夫です。ちょっとびっくりしてしまったけど、タオル持ってます』



「本当にごめん」



『そんなに量もなかったし平気ですから、そんな顔しないでください』



「〜っ何でなんですボンゴレ!そんな女放って置けば…」



「黙れよ。そんな女?ふざけんな。お前にそんなふうに言われる筋合いないだろ」



「あります!私はあなたの未来の愛人です!それに、私はあなたが…」



「愛人?そんなのつくるつもりはないけど。自称って哀しくならない?」



彼女は顔を真っ赤にして震えている。



私は所在なさ気に縮こまってるしかない。



「…それに、何を勘違いしてるのか知らないけど…乃慧は友人だよ。だから言い掛かりで失礼なことをするのは許さない」



チクリと、胸が痛くなった。



なんでかはよくわからないけど、すごく居心地が悪い。



彼女はキッと私を睨みつけてまくしたててくる。



「あなた、つけあがらないでよ!この方はね、あなたみたいなのは釣り合わない。それに…後数ヶ月で結婚するのよ!すぐに手なんか届かなくなるわ!」



結婚?ツナさんが?



ツナさんを見ると彼は気まずそうな表情を浮かべる。



ああ、じゃあ本当のことなんだ。



なんでそんな顔するんだろう?



私に今まで秘密にしてたから?



でも、そんなこと気にしなくっていいのに。



私たち確かに友達だけど、お互いのことなんて、本当はこれっぽっちも知らないんだから。



私はあなたのこと、何も知らない。



ここにいる彼女よりも、ずっと。



でも、それはお互いさまなんだよね。



私だって、私自身のことなんて、全然話してないんだから。



『そう、ですか…。でも、あなた何か勘違いしてます。私たちは何でもないんです。それと…』



胸がちくちくと痛むのには気づかないフリをして微笑んでみせた。



『私も、結婚するんです』






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