ドルチェ

□tranquillo
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暑い日差しの中歩いていつもの店に向かう。



もう夏休みに入って大分経つけれど、その間もしょっちゅうお店には通ってしまった。



今日もなんだかんだでお店に向かっている。



照り付ける日光でじわりと汗が滲む。



帽子を被って、薄手の涼しいワンピースを着ているのに、日本の夏はやっぱりあつくて仕方ない。



ミンミンゼミの声を聞きながら道を歩いてしばらくするとようやく目的地にたどり着いた。



扉を開けるとチリンチリンと聞き慣れた音が響く。



冷えた空気に包まれて心地良いけれど、体のほてりは抜けきれないままだ。



そのままいつもの席に向かうと、書類を睨んでいるツナさんがいた。



彼は私に気づくと顔を綻ばせる。



つられて私も笑顔になった。



『お仕事ですか?』



「うん。でも休憩しようかな。頭痛くなってきたし」



ぐっと伸びをして店員を呼ぶツナさんがアイスコーヒーを注文した。



私は少し悩んでからアイスティーを注文する。



すぐに品物がきたのでアイスティーを飲んで一息つく。



『もうミンミンゼミが鳴くんですね』



「うん」



『もう今年の夏は終わりなんでしょうか』



「なんで?」



『ミンミンゼミが鳴いたら夏が終わるって言いません?』



「うーん…聞いたことあるようなないような…。でも、そっか、夏が終わるのか…」



なんだか寂しそうな表情のツナさん。



『そんな悲しそうにしなくても、夏はまた来ますよ』



「うん、夏は、…ね」



なんだか意味ありげに呟くツナさんに胸騒ぎがするのを明るい声ではぐらかす。



『それに秋もステキですし!』



「食欲の秋とか?」



『ち、ちがいますっ』



からかうようなツナさんを軽く睨む。



確かに秋はいろいろおいしいけど!



「あ、そういえば、あのサクラって人とあのあとどうなった?」



『え?いえ得には…』



「そっか」



あのあと図書館で会ったときにツナさんを追いかけてしまったことを謝って、何を言うつもりだったのかきいたら、何でもないとはぐらかされてしまった。



吹っ切れたとも言っていたけど、何か悩んでいたのかな。



だとしたら悪いことをしてしまった。






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