トワエモア
□10
1ページ/4ページ
雲雀さんに会ってからというものの、例の開かずの扉の使用許可がおりてしまった私は、ここぞとばかりに雲雀さんとの連絡係を任された。
今まではなかなか連絡が取れなくて困っていたらしい。
定期的に雲雀さんの直属の部下である草壁さんがこちらには来ていたけど、やっぱり不便だったのだとか。
まだ会って間もないし、そんなに長く一緒にいるわけではないから言い切れないけど、雲雀さんは勝手きままというか傍若無人な感じだから、いろいろあったんだろう。
なんでそんな人に気に入られたのかはよくわからないけれど、貢献できたならよかった。
そんなこんなで、獄寺さんに渡された書類を風紀財団に届けに行き、ばったり草壁さんに出くわした。
調度いいと思って雲雀さんに書類を渡して貰おうとしたけど、草壁さんに止められた。
「待ってください。恭さんに会っていってくれませんか」
『はい?』
草壁さんは困ったような顔をした。
「勤務中なのはわかっています。少しでいいんです」
『……何故?』
草壁さんが渡せばそれで済む。
よく意味がわからず首を傾げる。
「恭さんは……依織さんを気に入っていらっしゃる。あなたと会った後は少し機嫌がよくなるのです」
『はぁ』
曖昧に頷く。
「最近少し機嫌が悪く、組織の人員が恭さんに八つ当た…活をいれられ使い物にならなくなっているんです」
今八つ当たりって言ったよね。
とは思いつつ、ツッコミはしない。
にっこりと笑いかけて見せると、草壁さんは安心した様子だった。
『わかりました。書類を渡すだけ、ですが』
「助かります」
気難しい上司を持つ草壁さんがなんだかかわいそうになり、ついそんなことを言ってしまった。