トワエモア

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沢田さんが話しを終えて来たのはそれから10分程後だった。
車に戻ってボンゴレに帰る途中、沢田さんがぽつりと呟いた。

「……で、なんかあった?」

ちらっと沢田さんに視線をやると、橙の瞳が私を見ていた。
これでも不機嫌は隠していたのに、なんで彼はこんなにも勘がいいのか。

『たいしたことじゃありませんよ』
「いいから言え」

命令口調のくせに、声音は優しかった。
多分、言いたくないといえば、ゆるしてくれる。
沢田さんは、こうやってたまに優しいから困る。
どれが本当の沢田さんなんだろう。

『少し、……失礼なこと言われただけです。沢田さんが気にするようなことは何もないですよ』
「そう。じゃあいいけど」

愛人、ねえ……。
沢田さんにはいたって不思議じゃないんだけど、そんな気配は今のところ感じたことがない。
というか、愛人どころか女の気配がない。
仕事が忙しすぎるのかもしれない。
ああ、でもなんで噂なんかがうまれたんだろう。
だって、火のないところに煙りはたたないって言う。

「腹減った……」

不意に沢田さんがそう呟いた。

『そう、ですね。もうお昼ですし』

沢田さんは少し見を乗り出して運転手に何か話しかけた。
よくは聞き取れなかったけど、どこか行くらしい。

「うまい店があるから、行くぞ」
『はい』
「なんかこういうの、秘書とボスって感じだよな」

なんて笑う沢田さんがなんだか子供っぽくてかわいかった。
本人に言ったら何されるかわからないから言わないけど。







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