トワエモア

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自業自得といえば自業自得なんだけど、沢田さんは本当に容赦無いひとだった。
仕事量がバーンと跳ね上がって、ヒーヒー言いながらこなし、なんとか終わった時には午後10時を回っていた。
労働基準法って知らないんだろうか。
いや、そんなわけないね。
でも、今日は新しい仕事もやらされたから効率悪くなっちゃったところもあったけど、明日からは多少はコツもつかめし、もう少しマシになるとは思う。
それに、沢田さんは、まだ仕事してるんだよね。
私にもできる仕事なら手伝うこともできるけど、ボスにしかできないことが多いみたいだ。
いつもこんなじゃ身体を壊しそう。
というか、いつ寝てるんだろう。

考えながら自室に向かう。
ふと、疲れで鈍っていたけれど、数人の女たちが話している声がした。
何となく、険悪な雰囲気を感じたので、聞き耳を立ててみる。
すぐ近くの空き部屋のはずの部屋の扉が微かに開いていて、そこから光が漏れている。
声もそこからするようだ。
足音を立てないように近づいて中を覗いてみると、数人の女性が一人の女性を囲んでいた。
明らかに、単に話しているなんてものではない。
むしろ、いじめとか、ケンカとか、リンチに近い雰囲気がするような……?
一対一ならほっとくんだけど、一対複数は見過ごせない。
一度深呼吸してから扉を開けると、室内の視線が全部私に向けられた。
取り囲んでいるのは、どうやらボンゴレの事務系で働いてるひとたちや使用人のようだ。
顔に見覚えがあるし、何度か屋敷内ですれ違ったと思う。
囲まれていた女性は、黒いスーツに身をつつんだ美人だった。
長めの黒髪に大きな瞳。
ただ、片方の目は眼帯に覆われている。

『何、してるんですか?』

室内を見渡して、半ば睨みつけながら三人に尋ねる。

「べ、別にあんたには関係ないでしょう」
『私、一人が複数に囲まれて敵意剥き出しにされてるのを見て見ぬフリで放っておける程、冷たい人間じゃないんで。事と次第によっては上にも報告しなくちゃいけないし』

私が沢田さんの秘書だというのは、私がボンゴレに来てすぐに屋敷中に知れ渡ったらしいから、彼女たちもやばいと思ったのかもしれない。
顔が引き攣っている。

『……で、彼女があなたたちに何をしたんです?』
「こ、この女が…っ!」

キッと眼帯の女性を睨みつけると、その女はヒステリックに叫ぶ。

「この女が六道様に色目を使うからっ!」

六道さんに…?
もしかして、嫉妬とかそういうくだらないやつ?
あれこれわめき立てる三人を呆れながら眺める。

「ずるいのよ!六道様と同じ霧の守護者だからって…!」

女たちの一人が言った言葉に、聞き流せない単語が含まれていた。






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