トワエモア

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* * *





夕食を終えて自室に戻る。
今日は荷物整理だけして寝てしまおうかなと思ったところで、部屋が控えめにノックされた。
扉を開けると、先程別れたばかりの山本さん。

『どうかしましたか?』
「ちょっと話したいことがあったんだ。今、時間あるか?」
『はい、大丈夫ですよ。中、入ります?』
「さすがに夜に女の部屋に入るのは気が引けるのな」

山本さんは冗談めかしてそういった。
それもそうだと納得して部屋をでる。
山本さんに連れられて、少し小さめの部屋に通された。
ソファに座るように促されたので腰を下ろす。
山本さんはちょっと待っててくれと言って部屋から出て行き、1分もしないうちに戻ってきた。
その両手には缶がそれぞれ握られている。
向かいに座った山本さんににこやかに差し出された缶を受け取る。
缶コーヒーだった。

『ありがとうございます』
「どーいたしまして」

本当この人爽やかだ。
さぞかしモテるだろうな。

「ツナから依織がここにきた経緯をさっき聞いたんだ」
『ああ…』

苦々しい思いで相槌をうつ。

「とんだ災難だったな」
『そうですね』
「急にマフィアなんて言われてもピンとこねーだろ?ツナは気軽に振る舞うように言ってたし」
『はい。あ、でも銃を渡された時にはマフィアらしさが少し垣間見えました』
「……そのことなんだけどな」

急に真剣な顔つきになった山本さん。
なんだか緊張してきた。

「ツナが自決用だって言ったろ?冗談だってすぐに言ったけどな」
『はい』

まさか冗談じゃないのか。
恐ろしい。さすがマフィア恐ろしい。

「それで思い出したんだ。野々宮はオメルタって知ってるか?」
『オメルタ……?』
「沈黙の掟って言えばわかるか」
『聞いたことはあります』

組織内の情報は絶対に漏らしてはいけない。
漏らせば見せしめに制裁される。
殺されるのだ。

「普通はボスに忠誠を誓うんだけど、野々宮は無理矢理連れて来られた期間限定だからあんまりわかんねーよな、マフィアの掟とか」
『すみません…』
「謝る必要はねぇよ。俺は、一応こっちのルールも知っておいたほうがいいと思っただけだぜ」

山本さんはそう言って一冊の本を取り出した。

「これ、昔小僧に…って今は小僧じゃねーか…、ま、リボーンに貰ったんだ」
『ええと…簡単マフィア入門…?は…?』

え、簡単なの。
てゆうかこんな本なの。
何で妙にコミカルなの。

何の冗談だと山本さんを見詰める。

「それまじでわかりやすいんだぜ?」
『そ、そうなんですか』

何だろう。
マフィアこんなで大丈夫なのか?






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