トワエモア

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私が啖呵を切ると、沢田さんはしめたとばかりに私を連れ出した。
社長が心配そうに見ている。
銀髪のひとに見張られながら車に向かう中後悔の念が過ぎりそうになって、慌てて頭を振る。
今回のことについては後悔も反省もしてない。
むしろ、マフィア相手によくあんなふうに言えたもんだと自分を讃えるべきだよ。

会社の窓からは同僚たちがなんだなんだと私たちを野次馬していた。

無駄に長くて黒塗りの車に乗り込む。
もちろん運転手つきだった。
後ろの方の席はU字になっていて、なんだかバラエティー番組で見たことがあるようなつくりになっていた。
限りなく端っこに寄って座ると、三人と私の間にバリアがありような気がした。

「……さて、きちんと自己紹介くらいしておこうか。君は野々宮依織だよね」

尋ねるというよりは確認するように沢田さんが言う。

『はい。野々宮依織です。…よろしくお願いいたします』

深々とよそ行き風に挨拶をする。
雇われたんだから上司。
仕方ない、仕方ない。
完璧な部下を演じようじゃないか。
このこわいひとも給料くれるって言うんだから、金のなる木だと思えばいい。
そうすれば理不尽も我慢できるはず。

ふと、リボーンさんが口を開く。
くくく、と笑い声がするんだけど、幻聴じゃないよね。

「おいツナ、こいつお前を金のなる木だと思うらしいぞ」
『え』

なんでこの人それを知ってるの!?
だって私、考えただけで口になんて出してないし…!
口に出すようなヘマするわけない!
だとすれば……
ニヤニヤする彼を恐々と見詰める。

「俺は読心術を使える」
『読心術って…!』

なんだこの人、そんなファンタジーありなの?

「金のなる木ねぇ……」
『あ……す、すみません』
「認めるんだね」

ああもうやだ。
死にそう。
なんでこんなことになってるんだ。

「……ま、いいけど」

意外だった。
スルーされた。
されてしまった。
いや、絡まれたかったとかじゃなくて。
今までの流れだともっと何か言われると思ったのに。
もしかしたら……そういうふうに言われることに、慣れているのかもしれない。
でも、それって、悲しくないのかな。

「隼人、自己紹介して」

はい、と返事をして殆ど黙っていた銀髪さんが私を見た。
見たっていうか睨まれた。

「俺は獄寺隼人。10代目の右腕だ」
『獄寺さんですね』

10代目っていうのは多分沢田さんだよね。

「俺はリボーン。ヒットマンだ」
『リ、リボーンさんですね』

ヒットマンて。
ちょ、ヒットマンて。

「俺は沢田綱吉。ボンゴレファミリーの10代目だよ」
『沢田様、とお呼びすればよろしいですか?それとも、ボス…でしょうか』
「ああ、様じゃなくていいよ。さんかボスで。他にお偉いさんがいないときだけだけどね。仲間内ならそれで問題ないから」
『はい……沢田さん』

ボス、はマフィアって感じがすごくして何となく避けたくなったのだ。






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