変人カノジョ

□18.もう一度
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ヴァリアーの医療設備はかなり高度なものになっている。
ボンゴレを沢田綱吉が継いだ後は、ボンゴレはかなり医療に力を入れていたが、その中でも郡を抜いているのがヴァリアーだった。
良い設備と腕のいい医師たちによりベルフェゴールは一命を取り留めた。
もとよりヴァリアーの幹部たちはやわではない。
むしろ普通のひとに比べたら随分と丈夫だ。
そうでなければ任務はこなせないのだから。
そして、敵の使った兵器が本物の雷に比べたら数段殺傷能力が低く、派手さ重視の見かけ倒しだったことも幸いした。
電気は臓器を傷つけることはなかったし、火傷も全身というわけではなかった。
それでも、重傷であることと、ケガから5日が経過する現在、いまだに意識が戻らないことも確かだった。





* * *





午前中に任務を終わらせたセイラは早足で廊下を歩いていた。
ここ毎日、セイラは足しげくベルフェゴールのもとへと通っている。
医務室に隣接している部屋に入ったセイラは、ベッドで眠っているベルフェゴールのそばに椅子を持ってくるとそこに腰掛けた。
無言でじっと寝顔を見詰める。

『火傷の痕、全然残らないってよ。よかったね、さすがボンゴレって感じ』

返事は返って来ない。

『ねぇ起きてよ。寂しい。てゆうか、独り言みたいになるでしょ…』

身体を屈めてセイラは顔を近づける。

『ベルが火傷のせいでお嫁にいけなかったら、責任もって私がもらってあげるから安心して目を覚まして』

数秒見詰めて、ダメか、とセイラが離れた。

「なんで俺がお嫁に行くんだよ」
『なんでって――――え、』

そっとセイラはベルフェゴールの前髪をよける。
すると、ぱっちりと開いた両目と目があった。

『…おはよう』
「おはよ」
『随分ねぼすけさんだね』
「しししっ、だって俺王子だもん…って、ちょ、なんで泣くんだよ」

両手で顔を覆ったセイラは小さく嗚咽を漏らした。

『だって…っ、し、んじゃう、かと…っ』

うわあんと子供のように盛大に泣き出したセイラにベルフェゴールもあたふたしたけれど、満足に身体さえ動かせずただ見守ることしかできない。

「病人困らせるなよ」
『ごめん…っ』

ベルフェゴールはふぅと息をついてからセイラの名前を呼んだ。

「怒んなよ?」
『内容による』
「…本当は、セイラが来たときはもう起きてた」
『なんですぐ言わないの!鬼畜っ、ドS!』

ベルフェゴールは子供のように唇を尖らせる。

「だって黙ってたら誰も気づかねーんだもん。医者も看護婦も、お前もな」
『前髪切ればいい』
「やーだよ」






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