変人カノジョ

□12.マッドマフィン
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ヴァリアー邸の中庭に、見慣れたハニーブロンドの後ろ姿を見付けたフランは、二階の窓から飛び降りた。
ぴょんと軽やかに降りる様は、まさにカエル。
そよ風に髪をなびかせながら花壇の前にしゃがみ込んでいるセイラに近寄り、フランは声を掛ける。

「セイラセンパイ、何してるんですかー?」
『ようフラン。今日も覇気がないね』
「え、何気にけなしてますかー?」
『うん』
「肯定すんのかよ」

あははと笑うセイラの横に、フランもしゃがみ込む。

「何してるんですかー?」
『土観察』
「また随分変なことをしてるんですねー」
『嘘だからな!』
「嘘かよ」
『実験で使う植物をこの辺で育ててるんだけど、ちょっと様子見』
「何作ってるんですかー?」
『マンドラゴラー』
「マジですかー」
『嘘だな!』
「また嘘かよ」

またもやアハハと笑うと、セイラははえていた草を2、3抜き取った。

『実験に使うっていってもただのハーブだよ。ちょっとハーブティーでも飲みたい気分でさ』
「そうなんですかー」
『あ、なんならフランも飲む?お菓子もあるよ。ヒマならおいでよ』
「マジですかー」
『これは嘘じゃないよ』
「もちろん行きますよー」

無表情の中にも若干嬉しそうにしながらフランはセイラについていった。





* * *





セイラがいれてくれたハーブティーを片手に、フランはふぅと息をついた。

「麗らかな午後にセイラセンパイとお茶とかサイコーですー」
『やだ、フランってばかわいいこと言ってくれるじゃん!やっぱり持つべきものはかわいい後輩だよねー』
「ミー的にはかわいいセンパイがいいですけどー。もちろんセイラセンパイのことですよー」
『ふふふ。いいこちゃんなフランには、セイラ特製チョコレートマフィンでもあげちゃおうかな』

すっかり機嫌のよくなったセイラはキッチンへと消える。

「もしかして…手作りだったりしますー?」
『ウィ』

差し出されたマフィンは売り物並に綺麗だった。
セイラは普段、料理なんてしないけれど、基本的になんでもできるひとなので、お菓子くらいらくらくと作ってしまうのだろう。






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