白色ポピー

□知ってる
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それからクロームと一緒にいろんなお店をまわった。
結局服と食べ物以外は買っていなくて店員はみんな迷惑に思っているかもしれないけれど、すごく楽しかった。
行く宛もなく二人並んで歩いていると、右手を軽く引っ張られる。
クロームは視線は私には向けられていなかったのでそれを追えば、どこかのブランドだろうか、今まで入ってきた店とは雰囲気の違うお店。

「紗那、ここちょっと入っていいかな?」
『うん』

少し緊張しながらクロームについて中に入った。


クロームに聞いたところによるとここはビアンキオススメのお店だそうだ。
なんでも近々ボンゴレ主催のパーティーがあるらしいのでそれに合わせてパーティードレスを買うらしい。
私は一度もパーティーに出たことがないからよくわからないけど、やっぱりちゃんとした正装で行くんだなとぼんやりと思った。

「…どれにしよう」

困ったように眉を寄せて店内を眺めるクローム。
確かに悩みもすると思う。
さすがビアンキオススメというだけはあって、おいてあるものはどれも派手すぎず地味すぎず、上品な雰囲気なのにどこか可愛らしい目を引くもの。
つまり、どれもこれもセンスがいい。
二人して唸っているとスーツをかっこよく着こなした女の店員さんが話し掛けてきた。
なんていうか、センスのいい店は店員もセンスがいいのだろうか。
彼女はどのようなものをお探しですか、とにこやかに尋ねてきた。
クロームが軽く要望を伝えると、店員は何着かのドレスを持ってきてくれた。
どれもクロームに似合いそうな物がピックアップされていたので、その店員に心の中で拍手を送った。
クロームと店員のやり取りを眺めていると急に店員がこちらを向いた。

「お客様はどのようなものをお探しですか?」
『あ、私はただの付き添いで…』

顔の前で両手を左右に振る。
とても、こんな高価なものを買うつもりはない。

「ではこちらのお客様がお選びになっている間、試着でもしてみません?」

私が驚きを隠さずに目を見開くと、彼女は人好きのする笑みを浮かべた。

「うちのモットーはお客様方たちのような可愛らしいお客様を幸せにすること、ですから。店長の口癖なんですよ」

彼女は店の奥に視線を送った。そこには一人の背の高いかっこいい女の人がいた。
私の視線に気付くとにこりと笑いかけてくれて、それがあんまりにも自然な動作なのに様になっていてかっこよく、わたしも自然と笑みがこぼれた。
店員に視線を戻すと彼女はそれに、手で口許を隠してこっそり言う。

「女の子なら見てるだけじゃなくて着てみたいものじゃないですか」

横にいたクロームもしきりに頷いていて、確かに私も一度くらいこんな風にきらびやかなものをきてみたくて。
となったら断る理由もなく。
私は照れながら深く頷いた。






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