白色ポピー

□ブランシュ
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デュークの話がじわりじわりと私を侵食していくような気がした。

ナイフをあてられている首が痛い。
だけど、そんなことを言えるような立場じゃなかった。

「――俺は、こいつを殺す」

ぐっと力がこめられて、ナイフが皮膚を切り裂き侵入してくる感覚。
つうと滴り落ちる血液がひどく不快だった。

「勝手なこと言わないでくれる」

視界の端で、恭弥がトンファーを握る腕をあげた。

「それ以上動くと、こいつの首を切るぞ?」

ピタリと止まった恭弥は不機嫌そうに顔をひそめた。

「六道骸…幻術だって使ったのがわかれば殺す」

骸は鋭い瞳でデュークを睨みつけた。

「もしもあなたが紗那を手に掛けるなら、僕達はすぐにお前を殺しますよ」
「そんなのわかってるさ。もとより命なんか惜しくない。…もう俺に生きる意味なんてないんだからな」

私は、どれだけデュークを傷つけたんだろう。

『…ツナ、恭弥、骸…』
「何だ、命乞いか?」
『違う』
「遺言か、聞いてやる」

ツナの暖かい色の瞳と視線が絡む。

『…デュークが私を殺したいなら、私は殺されてもいい』
「な…っ」
「何を言ってるんです!?」
『デュークには…他の誰でもない彼には、その資格がある』
「…は、何言ってる。俺を動揺させたいのか?…生憎それは無駄だ」
『でもその代わり、ボンゴレにはもう手を出さないで。皆も、デュークは殺さないで…全部私で終わりにしてほしいの』

デュークがすぐ後ろで笑い出した。

「俺がお前の願いを聞くと思うのか?」
『……これは私だけのお願いじゃない。お母様のお願いでもある』
「マリアンナ様の…?」
『あの日、私がボンゴレに行ったのはね、お母様と約束したから』

思い出してからまだ誰にも話してなかった、お母様との約束。
いきて、そう言っていたけれど、私にはまもれそうにない。
だったらせめて、デュークには生きてほしい。
だって、彼らは知らないけど、私は知っていたのだ。
お母様は、彼らを愛していたことを。
いつも、片時だって忘れたりしていなかったはずだ。
話すことができなくても、お母様はいつだって慈しむような目で彼らを見ていたんだから。
名前だって、ひとりひとり時間をかけて、悩んでつけていたって、私は知ってる。
デュークが死んだら、悲しむ。
いきて、そう伝えたかったのは、私だけじゃなかったと思うの。
そして、お母様はボンゴレを――ツナのことだって信頼して、大切に想っていたはず。
そうじゃなかったら、私にボンゴレに行けだなんて言うわけなかった。

『お母様はボンゴレを…ツナを信頼してた。大切に想ってたはずなの。最期に頼るって、そういうことでしょ?』

ツナの目が見開かれたのが見えて、笑いかけた。






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