白色ポピー

□裏切り者
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海岸沿いにある廃工場。
今では近づくひともまばらになったそこで、すべてを終えた後に私はデュークと落ち合うことになっていた。

現在夕方5時10分前。
後数分もすれば彼も姿を現すはずだ。

暫く経つと、不意に背後からコツン、と足音がした。

「紗那」
『デューク…?』

暗がりから近づいてきたのは、やはりデュークだった。

「無事に終わったのか」
『デューク…』
「何?」
『ごめんなさい』

私の言葉を合図に、さっきまで気配を消していた彼らが三方向からデュークを囲むように姿を現した。
各々武器を手にしながら。

「…お前、裏切ったのか。…まさかボスと雲と霧の守護者まで連れて来るなんてな」
『ごめんなさい、デューク。でも、違うの!デュークは勘違いしてるだけなの!』
「勘違い…?」
『お父様、お母様、兄弟たちを殺したのは、ボンゴレじゃない』
「え…?」
『本当なの、信じて!確かにツナはお母様とは知り合いだったけど…でも、ボンゴレじゃ…ツナたちじゃない』

デュークは私たちをぐるりと見渡した。
そうして暫く空中をさ迷っていた視線がもう一度私をとらえる。

「本当に?お前、騙されているんじゃないのか?」
『違う。そんなわけない』
「…確かに、そうだったら今頃お前も俺も生きてなんかいないか…」

デュークは苦笑した。
どうやらわかってくれたみたいだ。

「わかった。信じる」
『デューク…!』

嬉しくて駆け寄る。

後ろからツナの叫ぶ声がして、振り返ったら背後に迫るデュークの気配を感じた。

「紗那っ!」

切羽詰まったツナの声。
一体何事かと思っていると、首にひやりとする何かが触れた。
数秒間頭が真っ白で何も考えられなかったけれど、すぐ背ろから聞こえたデュークの小さな笑い声で我に返り、同時に状況を理解した。

『…デューク……?』

デュークによって首に添えられたのは、ナイフだった。

わからない。
なんで?
なんで彼がこんなこと?

『なんでこんなこと…っ』

聞こえる笑い声が大きくなる。まるで、嘲笑っているような、笑い声。

心が急速に冷えていく気がした。

「何故かって?……俺はお前が憎いからだよ」






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