白色ポピー
□姉と弟
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俺達はあの人にとって、ただの研究材料で、捨て駒だった。
そうわかっていても、俺達にとって、あの人がすべてだったのだ。
こちらにおいで
私のかわいい×××
お前は私の××××××××だ
そして同時に××××××だ
あの人はあの子にそう言った。
あの子はただ笑っていた。
あの人たちに囲まれて。
あの子と俺達の違いはいつも明白だった。
あの人が唯一笑顔を向ける子供。
結果を残せなくても無条件で愛される子供。
同じ遺伝子を持つのに、なんでこんなに違うのだろうか。
なんであの子にだけは、優しく笑いかけるのだろうか。
それはきっと、
あの子があの人の愛する人に、マリアンナ様に似ているからなんだろう。
こちらにおいで
私のかわいいむ×め
お前は私のさい××××さ×だ
そして同時にし××××くだ
世の中は不公平だ。
だけど、それでも俺の居場所はここだったし、俺はあの人もあの子も大切にすら思っていたのだ。
それは、一種の洗脳に近かったのかもしれない。
あの子は俺たちとは違うのだから特別なのは当たり前なのだろう。
特別なのだから、俺たちは守らなければいけない。
そんなふうに思っていた。
こちらにおいで
私のかわいいむすめ
お前は私のさい×うけ×さ×だ
そして同時にし××いさくだ
あの子は俺達とは違う。
たとえ同じ遺伝子をもっていたとしても。
――試験官なんかからうまれた俺達とは違うのだ。
愛情を受けてしかるべきなのだ。
月日を追うごとに、あの子と俺達の差異は大きくなっていった。
俺達より大きかったあの子は、いつの間にか俺達より小さくなっていた。
こちらにおいで
私のかわいい娘
お前は私の最高傑作だ
そして同時に失敗作だ
あの人はそう言う。
確かにそうなのだろう。
マリアンナ様によく似たあの子は最高傑作で、優れた能力を持ち得ないあの子は、失敗作なのだ。
俺達には失敗作は有り得なかった。
そんなものは生きていけなかった。
常に結果を求められていた。