白色ポピー

□こころ
1ページ/2ページ






目を覚ますと、見慣れた私の部屋の天井が目に入った。



視線を横にずらすと傍らに座っている骸の心配そうな目と目が合った。



『骸…』



「大丈夫ですか…?」



『うん』



ゆっくり身を起こす。



『私を運んでくれたの?』



「はい」



『ありがとう』



「いいんですよ」



優しく頭を撫でられて、胸があたたかくなった気がした。



『…ねぇ、骸』



「何ですか?」



『私…全部思い出したよ。…骸が、私を助けてくれたんだよね』



骸は目を見開いてから、ふっと笑った。



「紗那が生きたいと望んだからですよ」



『…ありがとう』



「いいんですよ。そのうち、ちゃんとお礼はしていただきますから」



『うん』



私を助けてくれたのは骸だったんだなぁ。



『ねぇ…何で私を助けてくれたの?はじめは助ける気、なかったでしょ』



「…おや、ばれてましたか」



『うん。ねぇ、どうして?』



骸は少し目をさ迷わせてから答えた。



「…同じだと、思ったからです」



『…何が?』



「たまたま紗那の首にナンバーが刻まれてるのを見つけて、きっと実験に使われていたんだと思って」



今はもうないそこに触れた。



私を助けた時に一緒に消してくれていたらしい。



「僕も、昔はそうでした。…犬も千種も一緒です」



『…え?』



骸はゆっくりと幼少時代のことを話してくれた。



苦しい実験の日々。



忌まわしい力を与えられたこと。



三人で逃げ出した、と。



悲痛な過去にじわりと涙が滲んだ。



だけど当事者の骸が泣いていないのに私が泣くわけにいかない。



ぐっとこらえる。



『骸…同じじゃないよ…』



「何がですか?」



『私…そんなに酷いこと、されてない』



小さい頃は、ただの実験材料としか見られていなかったんだと思う。



だけど歳をおうごとにお父様の態度は変わっていった。



多分、私がお母様に似ていたからだと思う。



そして、お母様がボンゴレに保護されて突然消えた時、拍車をかけた。



多分お父様は、私にお母様を見ていたんだと思う。



「…それはたいして関係ありません。…あの経験は、同じ苦しみを味わったものにしかきっと理解できない。紗那にはあの絶望が理解できるでしょう?」



優しく頬を撫でられて、堪え切れずに涙がこぼれる。



「泣かないでください」



『…わかる、よ…。…でも、私には、お母様が…いたから』



ずっと、お母様だけは私を愛してくれていた。



骸は誰かに愛されるべき幼少の時期に、苦しみだけを抱いていたのだろうか。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ