白色ポピー

□逃れることはできないから
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翌日、すっかり元気になったので皆の分の朝食をいつもより早い時間から用意していた。



昨日は随分迷惑かけちゃったから、少しでも何かを返したい。



トントン、と野菜を切っているとふと人の気配を感じて目をやった。



『ツナ、おはよう!』



「おはよう。なんか元気だね」



『うん。昨日一日休んだらすっかり元気になっちゃって。ツナはなんか顔色よくないよ』



「あんまり寝てないんだ。…ちょっと失敗しちゃって」



欠伸をするツナはくっきりと目の下に隈ができている。



『コーヒー淹れる?』



「お願い。ブラックで」



『うん。すぐ持ってくから向こうで待ってて』



言い置いてキッチンに向かいコーヒーをいれると、ふわりと香ばしい香りがした。



きっといい豆を使ってるんだろうなぁ。



もったいないことに私にはあんまりわからないけど。



考えながら二つのカップに、片方はいっぱい、もう片方は少なめにコーヒーを注ぐ。



それから少なかった方にミルクをいれてカフェオレにして、両方をツナのところへ持って行った。



『はい、どうぞ』



「ありがとう」



コクりと一口飲み込んで、ツナはホッと一息ついた。



なんだか本当に疲れてるんだなぁって思う。



いつもはそういうの感じないけど、大変なんだろうな。



ソファに座ってるツナの向かいに腰を下ろすと、視線を感じた。



『どしたの?』



「料理作るの途中だったんじゃないの?」



『んー、時間ならあるし、ツナと一緒にカフェオレ飲もうかなって。邪魔かな?』



「邪魔じゃないよ。むしろ居てくれた方が目がさえる」



『そう?…じゃあせっかくだし、ツナが眠くならないように何かお話しよっか』



「うん、お願い」



とは言うものの、二人で改まって話す機会も今まであまりなかったし、何を話そうかな。



『えっと…じゃあ、きいてもいい?』



「うん」



『ツナって……好きな人いる?』



「ぶっ」



ツナがのんでいたコーヒーを吹きかけた。



「な、ななななに急に!?」



『ただ皆のそういうの聞いたことないなぁって思って』



「そういう紗那は?」



『私?』



「俺だけ言うのはズルイよね」



『えー』



「てゆうか、さ」



『うん?』



「紗那って…バジルくんのこと好きなの?」



『ぶっ』



今度は私が吹き出す番だった。



『な、ななななんで!?』



「声裏返ってる」



『え、あ、えっと…』



「なんとなく、前にパーティーの時そう思った」



『あー…、うん、なんていうか…ちょっと違うかな』



「ちょっと?」



『うん。………確かにね、パーティーで会ったときは、バジルは助けてくれたし、優しいし、かっこよくて…正直ドキドキしたけど…』



あれから一年以上が経って、たくさん考える時間もあったから、なんとなく思ってしまった。



『なんか…違う気がして。しっくりこないっていうか。本当に私を見つけたのはバジルだったのかな、とか考えちゃって。…って、これ、すごく失礼なこと考えてるよね』



ごまかすように笑ってツナを見ると、ツナは目を見開いて私を凝視していた。



『えっと…ツナ…?どうしたの?』



「…なんでわかったの?」



『え?』



「あの日紗那を助けたのはバジルくんじゃないって」







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