CHANCE

□揺らぎ
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教室の前まで着いたら、深呼吸してから扉を開けて中に入る。

「おはよう神崎さん…って、その手どうしたの!?」

手に巻かれた包帯に気がついた女子生徒の一人が近づいてくる。
他にも気づいた数人が集まってきた。
まどかは教室の隅で唇を噛んでこちらを睨んでいる。

「どうしたの?なんかあった?」
『だ、大丈夫だよ。何でもない、から……』

意味ありげにそう言って俯いてみせる。
クラスメイトの大半は私が演技しているなんてきっと思っていないから、騙されたようだ。

「大丈夫ってそんなふうに見えな…」

ガラッと扉の開く音がしてクラス中の視線がそっちに集まった。
途端に室内は静まり返る。
学ランの集団が居たからだ。
ちょうど登校して来たのだろうツナたちがすぐに反対の扉から入ってきて、中の様子に困惑しているのが見えた。
そろそろと私のところへやって来る。

「ど、どうかしたの?何で風紀委員が?」
『私もわからない…ちょうど今来たところで…』

先に入ってきた風紀委員の二人に続いてゆっくりと入ってきたのは草壁さんだった。
まさかの副委員長の登場にクラス内に緊張が走る。
草壁さんは中を見渡して、私を見ると眉を寄せた。
私、何かしてしまったんだろうか。

「…手に怪我、か」

確かにそう呟いた草壁さんは小さく息を吐くと、ゆっくり口を開いた。

「昨日の夕方、風紀委員の校内見回りの時に屋上で血痕とカッターを見つけた」

ざわ、と騒がしくなる。
隣のツナが顔を青くさせた。

「壁にカッターを突き刺そうとした後や折れた刃も発見された。争った形跡がある。風紀を乱す者には制裁を加えなければならない。このカッターに見覚えがある者はいるか」

草壁さんは袋に入ったカッターをあげて見せた。
それは間違いなく昨日のカッター。
まどかを盗み見てみると青ざめていた。






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