CHANCE

□sheep
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放課後、応接室に行って仕事の手伝いをすると、珍しく早めに全部終わってしまった。

「帰るよ」
『はい』

せっかくだからもう少し一緒にいたいなんて考えてしまったけど、よく考えたら雲雀さんはいつも忙しいしきっと疲れてるはず。
付き合えたからってそんなことばっかり考えてることに自己嫌悪する。

「送ってくから早く用意して」
『…え、いいんですか?』
「文句あるの」
『無いです!むしろ、嬉しいです』
「そう」

なんかこれって、すごく恋人っぽい気がする。
恥ずかしいけど、それより嬉しさが勝ってる。
鞄を持って、扉のすぐ横の壁に背中を預けて待っていた雲雀さんのもとに急いだ。



いつもより早く終わったとはいっても、大分暗くなり始めていたので部活をやっている生徒もあまり見かけない。
もう日が短くなりつつあるんだなと実感しながら、流れる景色を眺めていた。
今、私がこうしているのがすごく不思議だ。
半年前だったら、雲雀さんのバイクに乗っている自分なんて想像もつかなかった。
それどころか、雲雀さんは恐怖の対称だったのに、今じゃ一緒にいるとこんなに安心できるんだもんなぁ。

なんて考えてるうちに家についてしまった。
家の前にバイクを停まったので、降りて雲雀さんに頭をさげる。

『ありがとうございました』
「…こんなことしてあげるの、君くらいだよ」

そんなこと言ってもらえるなんて恥ずかしいけど嬉しくて仕方ない。

「…じゃあ」
『待ってください』
「何?」
『今日こそお茶でもどうですか?』
「…この間言ったでしょ」
『夜じゃないです!まだ夕方です!』

前回送ってもらった時は断られてしまったし、今度こそ。
だって、少しでも長く一緒にいたい。
さすがに言えはしないけど。

『雲雀さん!』

しばらく眉を寄せて私を見詰めていた雲雀さんは、溜め息をひとつつくとバイクを押してうちの敷地内に入ってきた。

「……わかったよ。だけど、どうなってもしらないからね」
『どうって?』

やれやれと言った感じの雲雀さんが理解できなかった。






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