CHANCE

□beloved
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どうしよう。
泣きそうだ。

『何で鳴らないの?』

枕元の目覚まし時計を睨み付けても事態は変わらない。
なんでよりによって今日寝坊してしまったんだろう。
…いや、原因は一目瞭然か。
だって、雲雀さんとのこと思い出したら寝れなかったんだから仕方ない。
でも、だからって風紀委員長の雲雀さんの邪魔はしたくない。
あたふたしながら準備をして、慌てて自宅の扉を開けた。

「…おはよう」

パタン
扉を閉めた。
今、あり得ない人がいた。
気のせい?
目の錯覚?
それともまだ寝惚けているの?
ガチャリと音がして扉が開いた。

「…何で閉めるの」
『……』

無言で頬をつねってみた。
痛い。
…夢じゃない…?

『…な、ななななんで雲雀さんがうちに!?』
「…察してよ」
『え?察する…えと、』

もしかして、もしかすると…。

『迎えに来てくれたんですか…?』
「…わざわざ口にしないでよ」

プイと顔を背けた雲雀さん。
もしかして照れてるの?
ちょっとかわいい。

『あ、ありがとうございます。…嬉しいです』

えへへと笑うと頭を撫でられた。

「…それより葵」
『はい?』
「君、いつもこんな時間に家出るの?」
『へ?…ああ!遅刻…!遅刻しちゃう…っ』

ただでさえ遅刻しそうだったのに何で私はこんなに呑気にしてたんだ。

『ひ、ひば…!ひば、りさん…っ』
「何でそんな泣きそうなの」
『だ、だって!遅刻…っ!雲雀さん風紀委員長なのに…遅刻っ』
「僕は遅刻しないよ」
『え?』
「もちろん、葵もね」

そう言って雲雀さんは不敵に微笑んだ。






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