CHANCE

□bite
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放課後、私は応接室に向かって階段をのぼっていた。
踊り場に差し掛かった時、上の階から降りてくる人に気づいて顔を上げる。
まどかちゃんだった。
階段を挟んだ上側で彼女は私を見下ろしていた。
この訳のわからないことのはじめは、彼女だった。
京子に怪我までさせた彼女は、きっと裏で糸をひいてる黒幕のなのだろう。
でも、未だに彼女の目的がわからない。
私は怨まれるようなことをした覚えはない。
辺りを見回して誰もいないのを確認してから訊いてみた。

『…どうして、こんなことするの?』

彼女は無表情で何も言わず階段を降りてくる。

『まどかちゃんはいつも優しくて、皆の人気者で…あれは全部演技だったの?』

踊り場に降りてきた彼女は無表情のまま一歩一歩近づいてくる。
それに合わせて私も一歩一歩後退していった。

『私、怨まれるようなことした…?』

階段ギリギリまで下がった時、ようやく彼女は制止した。
彼女はスッと目を細めると笑みを浮かべる。
目だけが笑ってないその笑顔に無性に寒気がした。

「葵ちゃんはね、なんにもしてないよ」
『じゃあ何で…』
「ただ、邪魔なの」

スッと手がのびてきたと思ったら肩を押された。
ふわりと体が浮いて、ぐらりと傾く。
落ちてる。
違う。
落とされた。
突き落とした本人は楽しそうに私を見下ろしていた。
階段を転がり落ちた私は、鈍い音を響かせて頭をぶつけた。
体のあちこちが痛いけど、それどころじゃない。
ぐらぐらとめまいがして立てない。
込み上げる吐き気と格闘しているうちに意識を保っていられなくしまった。
最後に見えた彼女の狂喜を含んだ瞳が妙に印象的だった。






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