* * *
「…葵」
『えっ!?あ…はい!』
ついついボーッとしていた私に雲雀さんの訝しげな視線が寄越された。
「どうかしたの?」
『いえ、ついついボーッとして…すみません』
そう言って目の前の書類に視線を落とす。
今は雲雀さんの手伝いの最中なのに、こんな調子じゃ迷惑をかけてしまう。
「……葵、今日はもういいよ」
『えっ?でも…』
「別にそれは急ぎじゃないから。その代わりに町内の見回りにつきあってよ」
雲雀さんは椅子から立ち上がり部屋を出ていこうとするから慌てて後を追った。
勢い良く応接室から飛び出すと、雲雀さんがドアの横に立っていた。
私を見るなり呆れたように一言。
「そんなに慌てなくたって、置いていったりしないよ」
ポンと頭を撫でられて、つい笑みがこぼれ落ちた。
「行くよ」
『はい』
こうやって隣にいられるだけで、こんなに幸せになれる。
雲雀さんってすごいな。