CHANCE

□噂
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噂なんてあてにならないものだって今ではよく理解しているけど、この学校の生徒の多くはそうではないみたいだ。
私が転校生だから、で済むような注目のされ方ではなくて、今朝は登校中イライラしっぱなしだった。
人に好奇心で見られるのは感に障る。
一体何なんだろうと思っていたけれど、その謎は学校の昇降口についたときに解明された。
靴箱を挟んだ反対側で数人の女生徒が会話しているのが耳に入った。

「ねぇ、転校生の噂きいた?」
「きいたきいた!」
「あの転校生雲雀さんに気に入られたんでしょ?」
「屋上で二人で話してたらしいよ」
「風紀委員会に入れたがってるって噂もあったよね?」
「あの転校生名前葵って言うんでしょ?前にもおんなじ名前で雲雀さんのお気に入りいたじゃん。なんか自殺したとかっていう…」
「葵って名前が好きなんじゃない?」

何ともまぁ好きなこと話してるな。
すぐそばに本人がいるなんて少しも考えてないんだろう。
まぁそのおかげで理由がわかったわけだからいいけど。
教室までの廊下を歩いていてもちらほら鬱陶しい視線を感じた。
あの雲雀さんが関わってるからこんなにも好奇の的になってしまうのだろう。
こんなふうに大々的に噂になってしまったら、あいつは何か私にしてくるだろうか。
あの女のことだから、この噂を聞いたら平静を装いながらも腸が煮えくり返る思いでいるだろう。
そう考えると、うざったい視線を受けていても自然と口元に笑みが浮かんだ。






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