CHANCE

□girls' talk
1ページ/4ページ






応接室を出た後、昼休みの廊下を少し早足で教室に向かう。
自分のクラスについて扉を開けると、クラス内がざわついた。
お昼の時間だからか、教室外でお昼をとる生徒も多いのでクラスにはクラス全体の半分くらいのクラスメイトしかいない。
その中に今朝私にバケツの水をぶっかけた子たちがいたけれど、それどころじゃなかった。

「葵」

京子が駆け寄ってくる。

「来ないから心配したよ、どうしたの?」
『あ、それは「あれー?河上さん帰ったんじゃないのー?」

わざとらしく言葉をさえぎられて声の方を見る。
今朝の三人組だった。

「せっかく水かけてあげたのに乾いちゃってるし…一旦家に帰ったわけ?」
「水もしたたるなんとやらが台無しだよー?」

京子が目を見開いて私を見る。

「水!?」
『あ、それは大丈夫!それより…あの…』

口ごもっていると無視されたのが気に入らなかったのか三人組が私の肩を掴んだ。

「一体どうしたんだって言ってんの」
「友達のこと無視すんなよ?」
『は?』

思わず驚きの声が出てしまった。
三人組が訝しげに私を見てくるけど、だってビックリしてしまったんだから仕方ない。

『ビックリした。私たちって友達なの?』
「「「はぁ?」」」
『少なくとも私は朝っぱらから挨拶と一緒に水かけてくるような人たちを友達とは思えないんだけど…。てゆうか、よくそんなこと言えるね』
「あんたがいつまで経ってもまどかに謝んないからでしょう!」
『だって何もしてないから。なのに何を謝るって言うの?』
「いつまでもとぼけてんじゃねぇよ!」

一人がつかみかかってくる。

「まどかはあんたが謝れば全部許すって言ってんのよ。…早く謝れ!」
『…私が謝ってほしいくらいなんだけど』

正直にそう言うと、つかみかかっていた子が私を思い切り突き飛ばした。
ドンと壁にぶつかって、当たった背中が痛い。
京子が慌てて駆け寄ってくる。
彼女らは私を見下ろすと言った。

「あんたがそういうつもりなら謝りたくなるようにしてあげる」

そのまま教室から出ていってしまう。

「大丈夫?」

京子が差し出した手をとって立ち上がる。
『大丈夫、そんなに痛くない』
「よかった」

安心したような顔をする京子に心が温かくなったような気がした。

「お昼、いこ?」
『うん!…待っててくれてありがとう』
「当たり前だよ」

京子はそう言ってにっこり笑った。

「そういえばさっき何か言いかけたよね?後で聞かせてね」
『うん』

お弁当を手にして教室を出た。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ