CHANCE

□beginning
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朝登校すれば、周りからヒソヒソと陰口をたたく声がきこえて嫌になる。
もう学校中に噂は広まってしまったのかな。
ツナくんたちの話は広まっていないといいけど…どうかな。
迷惑かけたくないなぁ。
自分の下駄箱の前に来てみれば、案の定ごみまみれになっている。
既に予想してたから昨日上履き持って帰っておいたけど、正解だったみたいだな。
鞄から上履きを取り出して履き替える。
もちろん、履き替えた靴はビニールに入れて鞄にしまった。
これから誤解がとけるまで毎日こんなことをされるのかと思うと憂鬱だな。
汚れてる自分の下駄箱は片付けなくてもいいと思って教室に向かおうとして、だけど立ち止まった。
このままほったらかしにしてたら、もしかしたら風紀委員に見つかってしまうかもしれない。
そしたら雲雀さんの耳に入ってしまう。
雲雀さんには、私がこんな目に合ってるって知られたくない。
あんな噂、知らないでいてほしい。
片付けなくちゃ。
近くの清掃用具を取ってきて掃除していると周りからクスクスと笑う声がしてきた。
なんで私がこんな目にあわなくちゃならないんだろう。
私、何かうらまれるようなことしちゃったのかな。
結局昨日は、まどかちゃんが何であんなことをしたのかまではわからないままに終わってしまったけれど、何か理由があるのなら知りたい。

掃除が終わり一段落ついて教室に向かおうと体を方向転換させ歩き出す。

「河上さん」

背後から名前を呼ばれたので振り返る。

「おはよう」

そう言って笑った3人のクラスメイトの女の子。
にっこり笑う彼女たちに挨拶を返すことはできなかった。
だって、彼女らの手には水の入ったバケツがあったから。
彼女たちはクスクス笑っている。

「挨拶はちゃあんと返さなきゃ駄目だよ?河上さん!」

そう言ってバケツの水を私目掛けて放った。
バケツ3杯分の水をかぶって頭から爪先までびしょ濡れになった私を見て楽しそうに笑うその子たち。

「水もしたたるいい女って感じ?」
「感謝してよねぇ」

横を通っていくその子たち。
最後の一人が通りすぎ様ぼそりと言った。

「そうやって武を誘惑したんでしょ」

彼女たちに何もできなかった。
ついこの前まで楽しく笑いあっていたクラスメイトの女の子たちだったのに、こうも簡単に手のひらを返すことに呆然としてしまったからだ。

自分の体に視線をおとす。
こんなに濡れていたら教室には行けない。
帰っちゃおうかな、という考えが頭に浮かんだけれどすぐにそれは打ち消した。
昨日は早退してしまって雲雀さんに会っていない。
今日も休んだりしたら何か怪しまれるかもしれない。
それは駄目だ。
保健室なら替えの制服あるかもと思い至り、保健室に向けて歩き出した。






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